阪神岩崎優投手(34)が8日、優勝ゲームの裏側にあった秘話を明かした。チームは前日7日に2年ぶり7度目のリーグ優勝を達成。最終回に登板した岩崎は、藤川球児監督(45)の現役時代の登場曲であるLINDBERGの「every little thing every precious thing」を流した。歓喜の瞬間から一夜明け、ファンが驚いた演出に込められた思いを明かした。
◇ ◇ ◇
岩崎には5年間温めていた思いがあった。2年ぶり7度目のリーグ優勝を決めた7日。最終回に登板すると、藤川監督の現役時代の登場曲が流れた。スタンドはどよめきの後に大合唱。「(緊張感は)やっぱりすごかったですよ。2年前の経験が生きました」。大歓声の中、3者凡退で2年ぶりの胴上げ投手となった。
先輩の言葉がずっと胸に残っていた。岩崎も中継ぎで活躍した20年9月。守護神として君臨した藤川監督が、現役引退を発表。「3度目の優勝をまだ果たしていない。でもエキスは入っているから、後輩たちがやってくれる」。引退会見での言葉を覚えていたが、この年は2位に終わった。
「エキスが入っている身として、達成する必要があったんです。いざ、チャンスが巡ってきて『優勝する時は』と思っていた」。昨年10月に藤川監督の就任が発表。託された使命を「登場曲」という形で表すと、ひそかに心に決めた。
最終回を主に任され、31セーブと奮闘。優勝が近づくにつれ、不安も芽生えた。「失敗できない。曲を変えるというのは、その一発で決める必要がある。ものすごいプレッシャーかかる」。次の試合でもう1度、というわけにはいかない。
ただ、こんな機会は2度とない。覚悟を決めた。「自分にプレッシャーをかけるじゃないけど、自分への挑戦みたいな意味もあった」。23年にも同年に亡くなった同期入団の横田慎太郎さんの登場曲、ゆずの「栄光の架橋」を流した。ファンに愛された曲には、球場を1つにする力がある。
人知れず重圧と向き合い迎えた歓喜の瞬間。「打ち勝てたんで、昨日は本当に良かった」。指揮官からねぎらわれ、喜びもひとしお。「当たり前ですけど、めちゃめちゃうれしくて。監督の存在がなければここまで来られていない」。ホッと胸をなで下ろした。
次は日本一へ。“4度目の優勝のチャンス”だ。「体と心を整えて、先の戦いに向けてやっていきたい」。この日出場選手登録を抹消され、1度リフレッシュ。再びあの瞬間のために腕を振る。【塚本光】