<寺尾で候>
日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。
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かつて米大リーグ取材をしていた際に撮った1枚の写真を持ち出してなつかしさを覚えた。ドミニカ出身で、当時エクスポズの主力だったブラディミール・ゲレロと、ガソリンスタンドで出くわした。
一緒にいた共同通信のカメラマンにツーショット写真を撮ってもらった。その後、ゲレロはエンゼルスでシーズンMVPを獲得するなど、球界を代表する名選手にのし上がった。
引退後、米国野球殿堂入りを果たした。メジャー取材では印象に残っている1人。そのゲレロ・シニアの息子が、現在トロント・ブルージェイズ主砲のゲレロJrだ。
ブルージェイズが93年以来、32年ぶり3度目のワールドシリーズに進出し、ドジャースと対戦。24日(日本時間25日)の初戦を控えたトロントに住む知人と話し込んだ。
日本でなじみのないブルージェイズで、14年から3シーズン日本人初のチアリーダーを務め、球団プロモーション・宣伝部に勤務した鵜飼優衣(うがい・ゆい)が現地の盛り上がりを伝えてくれた。
「こちらの街はまさにお祭り騒ぎです。普段は野球にあまり興味がなく、アイスホッケーやバスケットボールを好むカナダの方々も、ブルージェイズの活躍には大いに注目して『今年のジェイズはすごい!』と話題になっています」
広島生まれの鵜飼は、宝塚北高から神戸女学院大を経て、カナダ・トロントのヨーク大に留学した。球団を退団後、現在はカナダ国内でコンテンポラリーダンスの舞踊家、振付師として活躍、ヨーク大でコンテンポラリーとバレエのテクニッククラスで教えている。
チアリーダーだった当時はチームに川崎宗則が所属し、イチロー(ヤンキース)、上原浩治(レッドソックス)らが間近でプレーする姿に触れてきた。
鵜飼は「ブルージェイズは、カナダで唯一のメジャーリーグの球団で、明るくエネルギッシュなチームですよ」と紹介しながら、トロントの象徴で、スタジアムの隣に立つCNタワーがブルージェイズカラーのブルーにライトアップされた写真を送ってきた。
「トロントという街自体は、世界中のさまざまな国の人々が共に暮らす多文化都市で、他の文化や人々にとても寛容で、助け合いの精神に満ちています。どんな人にも暮らしやすく、わたしに『みんな違って、みんないい』という言葉の意味を教えてくれました。ブルージェイズにもその精神が受け継がれており、常に支え合うサポーティブな雰囲気を感じます。全国的な人気を誇り、トロントだけでなくバンクーバーやモントリオールなど、他都市からもファンが応援に訪れます。その意味では、まさに“カナダ代表チーム”と言える存在です」
ブルージェイズのキーマンに上げたのは、「チームの顔でパワフルなムードメーカー」というゲレロJr、「華のある打撃と堅実な守備で支えるショートストップ」のビシェット、「経験豊富で若手の模範」と説明したスプリンガーの3人だ。
「チームはこの3人を中心にまとまっています。ベンチの一体感、ホームラン後のパフォーマンスも印象的で、球場では音楽やダンスなどエンターテインメント要素が満載です。ファンとの距離も近く、球場全体が一体となる雰囲気に包まれますから楽しんでくださいね」
鵜飼は昨年4月27日のドジャース戦で、大谷翔平が軽々とホームランを打った一戦を見ている。「カナダのファンが世界的スターとしての存在感を実感した瞬間でした」という。
ブルージェイズは、23年FAになった大谷の争奪戦に乗り出したが、ドジャースにさらわれた。鵜飼は「ブルージェイズは以前から日本人選手のスカウトに関心を寄せているんです。最近も日本人選手の獲得に積極的という声が聞かれます」と話した。
因縁の対決になるWシリーズを前に鵜飼は「海外にいらっしゃる日本人の活躍は自分のことのようにうれしいです。大谷選手や日本人が在籍するドジャースも応援したい。でもやはりブルージェイズの世界一を応援したい気持ちです!」と本音をのぞかせた。(敬称略)