【独占手記】ソフトバンク杉山一樹「一方的な愛」野球辞める覚悟だった剛腕が小久保監督に恩返し

阪神対ソフトバンク 阪神を破って日本一を達成し、笑顔でガッツポーズするソフトバンク杉山(撮影・岩下翔太)

ソフトバンク杉山一樹投手(27)が日刊スポーツに手記を寄せ、初めて守護神として走りきったシーズンの心境を語った。

6月中旬から9回を任され、レギュラーシーズンではリーグ1位タイの31セーブ。ポストシーズンでもクローザーとしてマウンドに立ち続けた。昨オフに野球を辞める覚悟だった最速160キロの剛腕は、小久保裕紀監督(54)への恩返しを果たした。

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CSと同じで負けたら終わりの戦い。日本シリーズも緊張感はすごかったけど、自分のペースで投げ続けることができたと思う。甲子園でもそうだったけど、僕はビジターではリリーフカーに乗らない。自分のタイミングでゆっくりマウンドに行きたいし、早く行き過ぎても時間がもったいない。最後に対策を詰めながらマウンドに立ちたいという思いがあった。

昨年、僕は50試合で防御率1・61の成績だった。実はシーズン成績にかかわらず野球を辞める覚悟で腕を振っていた。最終的に倉野投手コーチとも話し、日本一奪回のために25年も腕を振る決意をした。

仕切り直しの今季は初めに登板数の目標を立てた。でも6月中旬から9回を任されるようになった。自然と芽生えた感情は自分の数字よりも小久保監督を日本一にしたいという思いだった。小久保監督から特別何か親心を感じたのではない。僕の一方的な愛だった。僕が2軍時代から見てもらっているし、小久保さんが1軍監督になった24年秋に先発起用方針を断って中継ぎを直訴した。そんなわがままな僕を中継ぎで使ってくれた。一番の恩人に恩返しがしたかった。小久保監督の日本一胴上げは本当にうれしかった。

ずっと守護神とは明言はされなかったけど、オールスター明けに「守護神をやらせてください」とスタッフを通じて監督に伝えた。8月2日の楽天戦、3連投回避で僕はベンチから外れた。藤井さんが9回を投げた。僕はなぜベンチから外れたのか分からなかった。3連投はお構いなしだった。松本さんも藤井さんも9回を狙っていると思っていた。僕もゆずりたくなかったから「やりたいです」と志願した。今までの野球人生でそこまでの感情になったことはなかった。

もともとは「ノミの心臓」なのに9回は楽しかった。不安がない状態でマウンドに上がっているし、やることやって打たれたら仕方ないと思えた。起こる出来事全てがポジティブにとらえられた。もうやるべきことはないっていうスタンス。もちろん負けるのは嫌だけど引きずらないことにしている。阪神との日本シリーズでは1点差の登板ばかりだった。肉体的な疲れはないけど、精神的な疲労はすごかった。正直しんどかったけど、それが良かった。普段はそこまで自分を追い込むことがないから。

小久保監督のおかげで僕は迷いなく野球を続けてこれた。これからは自分の数字を追い求めながらいろんな可能性に挑戦していきたい。日本一の景色は格別だった。(ソフトバンクホークス投手)

 

◆杉山一樹(すぎやま・かずき)1997年(平9)12月7日生まれ、静岡市出身。駿河総合-三菱重工広島を経て18年ドラフト2位で入団した。21年5月11日のロッテ戦で自己最速160キロを計測。グラブには「牛一頭」「世界遺産になりたい」「男は鶏胸肉(とりむねにく)」「潰れてからが筋トレ」など過去にユーモアな言葉を刻んできた。今季は65試合登板し、3勝4敗、防御率1・82。31セーブはリーグトップタイで自身初のタイトルを獲得。今季推定年俸は4000万円。192センチ、107キロ。右投げ右打ち。