<八戸学院大 連載1>
第56回明治神宮大会は、高校の部は九州国際大付(九州・福岡)の初優勝で、大学の部は青学大(東都大学)の連覇で幕を閉じた。12年ぶり5度目出場の八戸学院大(東北3連盟)は、準決勝で青学大に敗れるも、18年ぶりの4強入り。同大の振り返りを3回に分けてお届けする。第1回は初戦で全国初アーチを描いた十鳥真乙主将(4年=東京実)。2度の指名もれを乗り越えた先にあったこの一発には、4年間の全てがつまっていた。
◇ ◇ ◇
日が落ちた神宮の右翼スタンドに、十鳥の完璧な当たりが吸い込まれた。「努力は裏切らないというのを自分の中で思っていて、それを体現できたホームランでした」。まさに4年間の集大成だった。
東京から本州最北端へ。高校時代に指名漏れを経験。4年後プロ入りを目指し、八戸学院大で大学野球の門をたたいた。「プロを目指すうえで環境もよくて、田舎で遊べないというか、誘惑もないので、そういう環境の中で自分がどれだけ成長できるかに挑戦したくて進学しました」。人生をかけた選択だった。
だが、迎えた今秋ドラフトでも名前は呼ばれず、2度目の指名漏れ。4年前と同じ光景に「辛かった」とぽつり。2日後に控えた同大会出場を懸けた東北代表決定戦を前に、切り替えられずにいた。そこで新沼舘貴志監督(43)が動いた。同じく指名もれしたエース小林直生(4年=聖和学園)を含めた3人で食事に行き、背中を押された。
「この悔しさをぶつけるのは野球でしかできない。(代表決定戦では)もっと悔しさを持って、自分たちが活躍してやるくらいの気持ちを持たないと。何かが足りないと気づかせてくれたのがドラフトだぞ」
十鳥はハッとした。「神宮でやり返す」。東北代表決定戦決勝では、今春日本一の東北福祉大を破り、12年ぶりの神宮出場を決めた。
そして、大舞台でも名をとどろかせた。「誰よりも練習してきた自負があったので、1本を出せてよかったです」。すがすがしい表情だった。まだまだ夢を諦めたわけではない。社会人野球チームへ進む予定で、2年後のプロ入りを目指す。「持ち味の長打力を伸ばして、率を残せるバッターになっていきたいです」。この4年間を決して無駄にはしない。夢をかなえるために必要なピースだったと思える日まで、進み続ける。【木村有優】