<寺尾で候>
日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。
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先日、大阪市立美術館で開催された「妙心寺 禅の継承」と銘打った特別展を訪れた。臨済宗妙心寺派の大本山。全国に3400の寺院を持つ日本最大の禅寺で、境内では40余りの寺院に囲まれている。
折に触れて妙心寺派トップに折に教えを請うている身として、もっとも楽しみだった寺宝の数々。豪華絢爛(けんらん)な襖絵(ふすまえ)の後、桃山時代の「龍虎図屏風(狩野山楽筆)」に見入った。
天空から舞い降りる龍を、迎え撃つ虎を描いたびょうぶは見事というしかない。激しい雨風で竹林のササが揺れ、虎は大きく口を開けて牙を向けている。繊細で、迫真のびょうぶ群に感心したものだ。
そんな勇ましい印象を受けた先週末の中日ドラゴンズと阪神タイガースの3連戦は、あっさりと“虎”が“龍”を退治した。今思えば戦前上々だった中日の評判は、まさに虚像というしかない。
龍虎対決で目に留まったのは、木浪(阪神)が規定打席に到達し、3割超えの打率を残している小さな記事だった。オープン戦では三塁、代打起用が目立ったが、逆境を自らの力ではね返した。
26年シーズンはセ・パ両リーグとも一巡したが、今のところ“3割天国”の様相だ。まだペナントレースは序盤に過ぎないが、続々と3割バッターが出現しているのだ。
1950年(昭25)の2リーグ分立後、打率3割に満たない首位打者は存在しないが、昨シーズンは終盤まで、それが現実になる可能性があった。最終的に少人数がクリアしたが、ちょっとさみしい現象だった。
セ・リーグは、トップの小園(広島)が3割9厘で、次いで泉口(巨人)が3割1厘の2人。パ・リーグについては、3割4厘で首位打者になった牧原大(ソフトバンク)のただ1人だった。
それが今シーズンは、セ・パ両リーグの3割打者が、8人ずつの計16人に上っている(13日現在)。昨シーズンは「投高打低」が顕著だったから、ちょっと早い話だが、これが今シーズンは逆転するかもしれない。
そもそも昨季3割打者が減少した要因として挙げられた意見はさまざまだった。NPBは使用球の反発係数が基準値内であることを強調。過去に統一球に関して痛い目にあっているNPBだから、ボールの意図的な変更は現実的ではない。
そこでピッチャーの能力が上がったという声は多い。すでに球速150キロ超は珍しくない。特に変化球の持ち球が多岐にわたってきたことが影響を及ぼしているといった見方はできる。
「落ちる」「曲がる」「沈む」の変化球が、さらに多様化。それを投げ分けると、制球率は低くなっても、そのばらつきが打者に見極めの難しさを感じさせることにもなるというわけだ。
このまま高打率の打者が続出する現象が続くとしたら、今度はバッターのほうが、多彩な変化球を身につけた投球に対抗できるようになってきたということだろうか。
もっともピッチャーも上々の成績を残している。こちらも登板数は限られているが、防御率が1点台どころか、2試合完封勝利の高橋(阪神)にいたっては0・38のトップに躍り出るなど、0点台も複数存在する。
なんでもかんでもメジャーに倣えの傾向は、アマチュアを含めて取捨選択が必要だが、投打にデータを含めた技術力の模索が続いているのは確か。いずれにしてもプロらしい駆け引きから生まれるパフォーマンスに注目している。【寺尾博和】(敬称略)