月刊サブロー<2>
今季就任したロッテサブロー監督(49)が、自身の思いや舞台裏などを語る「月刊サブロー」。21勝25敗でリーグ5位につける5月の戦いのキーワードは「香車(きょうす)」。月1回連載の第2回は、長打が急増した秘策や、交流戦への意気込みなどを語った。【取材構成=前田祐輔、星夏穂】
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5月初旬。チームはあと1本が出ない苦しい戦いが続いていた。追い打ちをかけるように、10日に藤原が右肩関節前方亜脱臼で離脱。4月にアキレス腱(けん)を断裂した種市に続き、攻守の主力を欠く緊急事態となった。それでもサブロー監督は前を向いていた。
「藤原が抜けたのは痛い。でも、意外とこういう時に新しい選手が出てきたりする。ええように考えてます。周りの選手にとってはチャンス。今は高部、井上、山口も含めて日替わりで出てるけど、結果を出した選手を使うからっていう話はしてます」
打線の転機になったのは、3連敗で迎えた14日の日本ハム戦(ZOZOマリン)。試合前、スタメン全選手を個別に呼んだ。
「とにかく香車(きょうす)でいけって」
意味が伝わらない若い選手たちに補足した。
「要は真っすぐに負けるなってこと。それをちょっと強めに意識づけした。変化球は空振りしてもええって」
将棋の駒の1つ「香車」。将棋盤の両端から、前方なら何マスでも進める一直線の駒。速い真っすぐに負けない意識を「昔の選手はみんな言ってた」という球界特有の言葉で伝えた。
今季ノーヒットノーランを許した日本ハム細野から2本塁打を放って勝利すると、ここから今季最長の4連勝。8日まで1週間で1本だった本塁打は、9日からの1週間は12本に急増。リーグ3位の月間21本で、長打力不足に苦しんだ打線が活気づいた。「ちょっとバッター陣の転機になったかなと思った。練習から引っ張れって言ってます。俺の気づきも遅かった」。
ロッテは元来、伝統的に反対方向への打撃を得意とする選手が多い。ボールを手元に呼び込み、逆方向へ運ぶ。サブロー監督自身、「つなぎの4番」として右方向への打撃を繰り返した。きっかけは、11年のシーズン中にトレードで移籍した巨人時代の経験だった。
「原監督に、バッティング練習で『レフトポール狙え』ってよう言われてた。みんな引っ張る。今思うと、やっぱりバッティングが強いチームは真っすぐに強い。ファイターズ、オリックスもそう」
直球に強くなれば、変化球の確率が増し、四球や球数が増える可能性がある。「変化球が増えた。それだけでも成功やって選手には話しました」。作戦はもちろん試合ごとに違うが、意識を変えた。佐藤はバットに「香車」と書き込み、5月4本塁打。福浦2軍監督とも連絡を密に「ファームでもやってる」と、チームの共通認識に据えた。
浮き沈みの続いた1カ月。継投策が裏目に出た試合後は「僕が悪いですね」と言い、責任を背負った。
「難しいね。反省ばっかり。はまる時は、はまるけど、あかんかった時はやっぱり後悔ですよね。ただ結果は分からないので、別の選択をした時の結果も見たいなとは思うけど、そればっかりは見られない。何が正解かは分からない」
特に重視しているのは6回。「俺の中では一番怪しいと思ってる。先発が100球前後になって、5回が終わって時間も空く。経験上、点を取られやすい」。
15日オリックス戦(ZOZOマリン)では5回まで1安打の初先発ロングを続投させ、裏目に出た。翌日は尻上がりに調子を上げた田中を5回無失点で降板させて勝利。「同じことを繰り返したくなかった。今は中継ぎ陣もいいので」。救援陣の防御率は2・46でリーグ1位。日々の反省を生かし、最善の策を打つ。
26日からの交流戦は現役時代、計18本塁打、103打点と好相性の舞台。キーマンに挙げたのは、球団76年ぶりの新人開幕投手で勝利した左腕の毛利だった。
「ジャイアンツとか、その辺に当てたいなって。どうなるかわからんけど、俺の願望ね」
ローテーションの関係で、実現するかは分からない。それでも「やっぱり注目される。そこでもし勝てたら、また自信につながるかなと思ってるんで」と成長を願う親心がある。
ベンチに離脱した種市の背番号「16」のユニホームを掲げて戦うことを提案したのはサブロー監督だった。藤原の応援歌で打席に立つ選手もいる。一丸で戦いながら、私生活ではデジタルデトックスに取り組み、必要な情報以外はシャットアウトする。
「基本見ない。自分のこともチームのことも見ない。順位も見ない。借金だけや。まだまだ借金が多いから、勝つしかない」。借金4で首位に5・5ゲーム差。混パに食らいつく。