【西武】絶体絶命脱したピックオフは2月からの練習あってこそ ネビンの「演技」と技術もお見事

中日対西武 11回裏中日2死満塁、牽制死となる細川成也(左)一塁手はタイラー・ネビン(撮影・森本幸一)

<日本生命セ・パ交流戦:中日1-4西武>◇7日◇バンテリンドーム

西武が“お家芸”のピックオフに成功し、交流戦4カード連続勝ち越しをたぐり寄せた。

交代間もない上田大河投手(24)がストレートの四球を与え、延長11回裏も2死満塁に。次打者の初球もボール判定で、場の流れは完全に「中日サヨナラ勝ち」に近づいた。

そんな中でも視野広く。1点入るだけで終わりなのに、満塁での一塁走者のリードが少し大きい。柘植世那捕手(29)も首脳陣も気が付いた。柘植がベンチに目配せする。「いいよ」。西口文也監督(53)がピックオフへのゴーサインを出した。

捕手は絶妙なタイミングでサインを出すこと。投手は迅速かつ正確に、投げた瞬間は無人の一塁ベース上に送球すること。

そして一塁手の仕事が重要だ。一塁走者の5メートル以上後ろを守るタイラー・ネビン内野手(29)はサインが出た瞬間、何を思ったか。

「しっかりと練習を重ねているので、サインが出た瞬間とかに緊張はないです。あとは成功させるだけ」

柘植も「最高でした」と白い歯を見せつつ「そこで(アウト)取れると思ったので」と淡々とし、上田も「(悪送球の)リスクは考えなかったですね。けん制とかは得意なんで」と、サインプレーにかかわる全員が腹が決まっていた。

ネビンはピックオフが決まる20秒前、一、二塁間のゴロを捕り、二塁カバーに入る源田へ送球する動きをイメージし、体を動かしていた。全てに備えた後、ピックオフのサインが出たとみられる。そこでネビンは。

「何も起きないように振る舞うこと、ですかね。あとはタイミング。(一塁カバーが)早すぎても遅すぎてもダメなので。焦ることなく、自分の気持ちをコントロールしながら」

ごく自然に振る舞っていた“名俳優”が突然、一塁カバーへ駆け出す。中日の一塁ベースコーチが気付いて叫ぶも、もう遅い。

ネビンが動き出してから1・8秒後、上田のストライク送球でタッチアウトが成立。2秒後にはネビンが絶叫でガッツポーズし、中日ファンの金切り声がドームに響いていた。

1年に何度もできるプレーではない。相手にばれては意味がない。有限の実行機会に成功し、しかも引き分けでなく「1勝」に直結。大きい。

西口監督は「成功するために使ったんで」と言う。上田の送球がそれたら、ネビンのタイミングが少しでもずれたら、悪送球でのサヨナラ負けもありえた。指揮官はさらに続ける。

「リスクは考えてないです。ちゃんと投げてくれるもんだと思ってるから。そのための練習はしっかりやってるんで」

そう。練習はしている。宮崎・南郷キャンプでしっかりやっている。ファンや他球団の編成陣、報道陣もいる中で、カーテンを敷かずに公開練習でやっている。2軍の高知・春野でも。西武がピックオフの練習をしていることは、春季キャンプでは一目瞭然だ。

「本当によく決めてくれたと思います。本当にあのプレーは大きかった」

十分に仕込んで、ずっと懐で温めていた。シーズンが4割を消化し、キャンプでの“目撃者”たちがその存在を忘れかけた時、最高のタイミングで本番を切り出した。【金子真仁】