<支えタカとよ>
ソフトバンクを支える人々にスポットライトを当てる「支えタカとよ」(随時掲載)。26年シーズン第2回は伴元裕メンタルパフォーマンスコーチ(41)です。24年秋に入団し、2年目のシーズンを迎えています。選手のメンタル面を支援しながら、パフォーマンスを最大限に発揮できるようにサポートしています。
◇ ◇ ◇
昨季はベンチで選手と一緒に勝利を喜んでいたヒゲがダンディーな伴コーチ。2シーズン目の今季は、試合中にベンチ裏の選手サロンで選手たちの話を聞く。球場内の騒音にも邪魔されない。
「今年もベンチに入らないというわけではないんですが、働き方、関わり方は昨年と変わってないですね」。
“励ます人”、“モチベーションを上げる人”と勘違いされがちだが、「メンタルパフォーマンスコーチ」とは「置かれた状況、どうなるか分からない中で、その予測に対して適切な行動を出せるように支援をするということです」と説明してくれた。
選手からも絶大な信頼を寄せられ、試合前、試合中、試合後と会話を重ねていく。今回は今季台頭してきた正木智也外野手(26)、庄子雄大内野手(23)の2人を実例に、本人たちの了承を得て、どのように現在取り組んでいるかを明かしてもらった。
◆正木の場合
「トライしているのが『結果に意識を向けない』。今季、ボール球を振らなくなり選球眼がよくなっている。これは『ボール球を振らない』『ストライクを振る』ということではなく、自分の得意なゾーンがあって『打てる球を打っていく』という思考。ストライクを打つと考えると結構、ストライクに見えたものを全部振ってしまう。でも、結果としてストライクに取られた球はOK。そうではなく自分が強く打てるゾーンにとにかくアプローチをかけていく。なので『強く打てる球を強く打つ』。この思考の転換が今、彼の中でフィットしています」
打球速度188キロの超高速アーチを放つなど、打球の強さはチーム屈指。今季の思い切りのよさは、このような思考からも来ている。
◆庄子の場合
「イメージ能力にたけている選手。『この投手にこうアプローチすると、こう失敗する』とかを考える能力が非常に高い。打つ方向、アプローチをかける球、ゾーンと打つ方向に向かって打とうということができたかによって判断するということにずっとトライしてきた。4打数無安打でも『いいアプローチが自分ではできた』と。『三振したからダメ』とか『打てたからいい』という結果では評価せず、自分がいいアプローチができたかどうかで善しあしを判断する。ここの成長ですね」
大卒2年目の今季、5月から遊撃手のレギュラーを奪わんばかりの勢いで売り出し中。結果を恐れないことと内容で頭を整理することで、打席を重ねても自分を見失わないようだ。
今季からソフトバンクではファームにも柄木田健太メンタルパフォーマンスコーチを置いている。DeNAが4年前に導入し、2年遅れてソフトバンクは採用した。野球だけでなく日本の全スポーツ競技でフルタイムのメンタルパフォーマンスコーチを入れるのは2例目だが、複数人いるのはホークスが初となる。伴コーチは「すごくやりやすい。2人で情報を密に共有しながらやっています」。ファームから初めて昇格した若手や逆に調整のためファームにいるベテランに対しても2人で情報を共有することで、ブレずにサポートすることができる。
シーズンを折り返し、3年連続リーグ優勝、2年連続日本一を目指すソフトバンクにとっては、重圧のかかる戦いが続く。初めて年間通して戦う若手も多い。ベンチに姿はなくとも、伴コーチが歓喜の瞬間まで、しっかりとサポートする。【石橋隆雄】
◆伴元裕(ばん・もとひろ)1985年(昭60)6月10日生まれ。東京都出身。7年間の商社勤務の後、渡米しデンバー大大学院スポーツ&パフォーマンス心理学修士課程を修了。17年に帰国後、野球、サッカーなどのトップアスリート、プロチームのメンタルパフォーマンス支援を行う。24年秋にソフトバンクに入団し、メンタルパフォーマンスコーチに就任。今年春に著書「集中力革命」を出版した。
○…今季から新加入した柄木田健太メンタルパフォーマンスコーチ・ファーム担当(34)は、数多くの若い選手のサポート役とやっている。「2軍、3軍とあるので、立場も違う選手がたくさんいる。伴コーチと情報を共有することで、2軍から上がる選手が、メンタルでどういうことに取り組んでいるのか、逆に降格してくる選手が1軍で何に取り組んでいたのかを、お互い知ることができるので選手にも伝えやすい」と話す。プロ野球での指導は初で、試行錯誤を繰り返しながら熱心に取り組んでいる。