プロ野球が「野球振興くじ」導入検討へ 背景には深刻な競技人口の減少 「非予想系」に限定 

オーナー会議後の会見で説明するNPB中村勝彦事務局長(撮影・浅見桂子)

プロ野球12球団のオーナー会議が16日、都内で行われ、中学野球の財源確保を目的とした「野球振興くじ」の導入に向け、具体的に検討することが決まった。これまで超党派のスポーツ議員連盟側からの要請を受けて「球界くじ」について議論したことはあったが、今回はプロ野球界の最高意思決定機関である「オーナー会議」自体から提案がなされた。「非予想系」に限定し、今後はアマチュア団体を含めた野球界全体でスポーツ振興くじの対象に加わるか議論を進めていく。

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歴史的な情勢変化の背景には、深刻な競技人口の減少がある。単なる少子化にとどまらず、中学野球の部活動の現実があった。政府が主導する教員の働き方改革に伴い、中学部活動の地域移行が段階的に進められている。受け皿となる地域側には、外部指導者への謝礼やグラウンドの確保といった財力が不足している。プロ野球の榊原定征コミッショナーは「野球の競技人口は07年の160万人から昨年は78万人に減少した」と危機感を口にした。

NPBは15年、18年にスポーツ議連からの要請で「野球くじ」について協議しているが、賭けの対象となることへの球界内の警戒感が強く、立ち消えた。その時点では、まだ中学校の部活動が機能していた。しかし現在は球界を支える裾野の状況が一変。この強烈な危機感がオーナーたちを突き動かした。議長を務めたDeNAの南場智子オーナーは「野球振興事業の財源確保のために振興くじを活用する意見が出た。検討を進めることに異論を唱えるオーナーはいなかった。スポーツ振興くじを進めるに際し、留意すべきポイントを議論した」と話した。

前向きな検討の前提として、資金使途を主に中学部活支援と明確にすること、違法なスポーツベッティング(賭博)は断固拒否、八百長を罰する法整備の推進を社会へ発信する啓発活動に努めることなどが確認された。

日本野球機構(NPB)の中村勝彦事務局長は、自分で勝敗を予想するものではなく、コンピューターが無作為に勝敗パターンを選択する「非予想系」に限定するとした。その上で「スポーツ振興くじは賭博とは全く異なると整理をしている。八百長につながるという懸念は全く考えていない」と話した。

検討期間について、南場オーナーは「法整備を伴うので時間がかかる可能性がある。拙速を重んじるテーマではない。慎重にしっかりと進めていくべきテーマ」とした。プロアマを含めた日本球界の総意を形成し、慎重に進めていく構えを示した。【鳥谷越直子】

全日本野球協会(BFJ)・山中正竹会長 今後、野球をはじめとしたスポーツの振興はますます重要になってまいりますことから、このたびの件についても、協会内、そして関係各機関としっかりコミュニケーションをとり、当協会としてできる協力をしていきたいと考えております。

◆非予想系くじ 主催者側のコンピューターが無作為に選んだ勝敗に賭ける「くじ」。購入者が試合ごとの勝敗を指定できない。八百長の防止には効果的とみられる。Jリーグの「BIG」などが採用している。JリーグやBリーグのスポーツ振興くじは25年度に過去最高となる約1380億円を売り上げ、約9割を非予想系が占めた。

◆黒い霧事件 1969年(昭44)10月、プロ野球選手の八百長事件関与の疑惑が浮上し、西鉄ライオンズの選手が関係していたことが発覚した。70年5月、コミッショナー委員会の諮問会で、敗退行為を誘われたものを含めて西鉄では池永投手ら4人が永久失格処分を受けた。他球団でも東映の選手、オートレースの八百長に絡んだ中日の選手も永久失格となった。スター選手と暴力団員との「黒い交際」が相次いで表面化。西鉄オーナー辞任など社会的事件に発展した。池永氏は現金100万円を預かったことは認めたが、八百長への関与は一貫して否定。復権へ向け、嘆願書提出や署名運動などの活動が行われた。05年に永久失格処分の解除が決まり、35年ぶりに復権した。

◆オーナー会議の主な議題 (1)NPBエンタープライズから25年の決算報告。当期純利益は増収減益で2億3400万円。今期の収支予想はWBC関連等で増収増益で回復が見込まれる。デジタル事業はライセンス利用料、データ運用補修費、追加開発費などがかかり、当面赤字が続く見込み。(2)26年WBC報告。ピッチクロック、拡大ベースの対応状況並びに今後の国際大会スケジュールについて。(3)ゲームオペレーション委員会報告。ピッチクロック、ピッチコムの導入について検討を進めている。国際的な流れも考慮し検討を進めていくように指示。

◆オーナー会議出席者 DeNA南場智子(議長)、日本ハム井川伸久、オリックス井上亮、中日大島宇一郎、西武後藤高志、阪神秦雅夫、ヤクルト成田裕、巨人山口寿一(以上オーナー)、ソフトバンク後藤芳光、広島松田一宏、楽天森井誠之(以上オーナー代行)、ロッテ高坂俊介オーナー臨時代理人