プロ野球、中日の元投手で、引退後は野球解説者のほかタレント、司会、俳優など多彩な芸能活動を続けていた「板(ばん)ちゃん」の愛称で親しまれた板東英二氏が22日に慢性心不全のため死去したことが28日、分かった。86歳だった。
◇ ◇ ◇
2011年(平23)の晩秋、早朝7時すぎ。板東さんは岡山・倉敷にいた。
当時の楽天星野監督が車で球場入りすると、カギのかかった正門前に男性がぽつんと立っていた。「こんな早くに誰や、あのおっさん……ば、ばんちゃんやないか!」。ドアを開けて駆け寄り「何してるんですか、こんな所で」「監督になって、あいさつもしてなかったし。ここで待ってれば確実に会えると思って」。監督室になだれ込み、朝食を食べることになった。
板東さんが現役引退した69年、星野さんは中日に入団した。「キャンプ中、オレがブルペンで投げると、後ろから煙が立つんだ。それもなんか、いい匂いでさ。振り返ると、いつも板東さんが焼き芋を焼いていたんだ」。
有望な新人への妨害行為…板東さんはあんパンをほおばりながら「同じ右投手で、ドラフト1位で入ってきて。自分は肩を手術していて『これはまずい』ってね。結局、引退したから効果なかったね」と悪びれず笑った。
監督と並んで午前中の練習をじっくり見て、満足そうに帰った。「まったく、変わっとらん。ああいう人だ」「面白い方ですね」「面白いもそうだが、優しい人だ。前の日から倉敷に来ていなければ、あんな時間にいない。人目につくと迷惑だと思ったんだろう」。お目にかかったのは1度きりでも、おおむね理解できた気がした。【宮下敬至】