【西武】苦労人・是沢涼輔のプロ初打席にベンチ前のめり 大敗も最後の最後でチームに勢い戻す

日本ハム対西武 9回表西武2死、四球を選ぶ是沢涼輔(撮影・黒川智章)

<日本ハム2-8西武>◇13日◇エスコンフィールド

2位西武は3位日本ハムに大敗し、同一カード3連勝は逃した。ただし、最後に勢いが戻った。

この日をもってファーム再調整が決まっていた是沢涼輔捕手(26)が9回2死、代打で送られた。プロ初出場、初打席。太いまゆ毛で投手と対峙する。応援席から熱い声援が飛ぶ。

三塁側の西武ベンチも一気にボルテージが上がった。マスクではなく代打で起用した西口文也監督(53)も「雰囲気的に良かったですよ。やっぱり盛り上がりました」。やっぱり、と言ったあたり、そんな狙いもあったのかもしれない。

中継のカメラは、ベンチ内で立ち上がって大声を張る平沢大河内野手(28)の姿を映した。伝え聞いた平沢は「え~、抜くなよ…」と苦笑いする。少し気恥ずかしいけれど、自然と立ち上がっていた。

「いや、もう、応援したかったんです。2軍でずっと一緒にやってましたし、いろんな準備もしてましたし、頑張ってる姿も見てたんで。ヒット打ってほしくて声出してました」

是沢は健大高崎(群馬)でも法大でもずっと、控え捕手だった。東京6大学野球リーグでも3試合に出場しただけ。それでも強肩と人間性を買われて西武に育成ドラフトで指名され、3年半の努力を経て、ようやく7月末に支配下登録を勝ち取っていた。

日本ハム柳川をぐっと強い目で射貫く。ボール、見逃しストライク、ボール、ボール、見逃しストライクでフルカウントになった。5球連続で振らない。

「いや、もう、ずっと振るつもりでしたよ。頑張って(ボール球は振らずに)粘りました。それに追い込まれて粘るのは2軍ずっとやってて、そこが一番思い浮かんだので」

練習の成果か、150キロ台の直球を3つ続けて、一塁側スタンドへはじき返す。大学通算0安打の男が、そうやって1軍の舞台で食らいついていく。背後から大きな拍手が送られても、気づけないほど集中して必死に打席を送る。

最後、高めに抜けた。「よっしゃ!」と2度叫んだ。ベンチからの拍手もようやく聞こえた。「普段は拍手する側なので。うれしかったですよ」。

是沢からは背後だったから知るよしもないものの、西武ベンチは全員が前のめりで是沢を応援していた。実績も年齢も立場も関係ない。是沢の姿がそうさせた。西口監督も「本当に集中してて、何とかして塁に出ようという気持ちが前面に現れていて。良かったなと思いました」とたたえた。

大声を張った平沢は「いいフォアボール取ってくれて良かったです。つながりますね」と感謝した。自主トレをともにすることもあった岸潤一郎外野手(29)も、平沢と同じように特に目立つ形で是沢に声援を送っていた。

「そもそも支配下になった時も電話してうれしかったっていうのもあるし。やっぱりうれしいし、ああやって是ちゃんがフォアボール取ってガッツポーズしてる姿に、負けはしましたけど、なんかその、盛り上げてくれて。負けた雰囲気じゃないようにしてくれたのはあると思うので。だからうれしかったです」

そのひたむきな姿でベンチを1つに束ねた是沢は、大荷物とともに1軍を後にした。それぞれが多くを感じたであろう。是沢がやってのけたことを、生み出した流れを、ムダにはできない。【金子真仁】

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