【こんな人】引退ロッテ唐川侑己を恩師・小谷正勝氏が語る 浦和で交わした10年前の約束

小谷正勝氏(2025年撮影)

ロッテ唐川侑己投手(37)が4日、現役引退を発表した。

2軍投手コーチとして指導した小谷正勝氏(81=日刊スポーツ客員評論家)が、つづったコラムから寡黙な右腕を振り返る。

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巨人の2軍投手コーチだった2007年に「千葉にすごい投手がいる」と話題になった。

何かの拍子でスカウト会議に参加することになり、当時のドラフト候補の映像をチェックすることに。成田高校の唐川侑己投手を見させてもらった。

最初の印象として、少しひ弱な感じを受けたことを記憶している。しかし、雰囲気、投球、ゲームセンスなどは素晴らしいと感じた。

投球フォームは人それぞれで評価は異なるが、見る限りでは手の付けようがないほど完成されていたし、文句なしのドラフト1位候補だと直感的に思った。

直球のコントロール、キレ、縦に大きく割れるカーブ、スライダーを見ても言うことはなかった。高校生の投手を見る上では、いかに伸びしろがあるかが大切なのだが、これだけのまとまりがある投手は非常に珍しかった。予想通り、1年目から1軍で先発し5勝を挙げた。

縁というのは不思議なもので、13年からロッテの2軍投手コーチを務め、唐川と出会った。不調で2軍に降格してきた16年が忘れられない。

対話から始めた。爽やかで、うそのない姿勢に好感を持ち、二人三脚が始まった。高校時代の映像を見ていたことが役に立ち、不調の原因はすぐに分かった。「チェンジアップに取り組んでから、ストレートが走らなくなった」とのこと。

新たな落ちる球を操る方法として、体を正対させ、インパクトで手首を利かせず、そろばんを縦になでるような形が自然と染み付いたのだろう。これはチェンジアップを投げる時の錯覚であり、陥りやすい弊害といえる。

「チェンジアップ投法」の改善に向け、ゴロ捕球後に遊撃から一塁へスリークオーター気味に送球させた。テークバックは、上からでも、横からでもトップまではほぼ同じ。

彼の場合、上投げよりスリークオーターの方がヘッドが利くと判断した。足を動かし、体全体で投げる意識を思い出させるのも狙いの1つ。当時、唐川がサイドに転向したとうわさが流れたが、原点に立ち返るために必要な練習だった。

「1軍に呼ばれた最初の登板で、とにかくインパクトを出そう。自己最速を更新しよう」と約束した。

見事にクリアするだけでなく、今では日本で指折りのカットボールを操るリリーバーへと進化した。今年の巨人とのオープン戦の登板を見ても、相手が分かっていてもカットボールで勝負し、完璧に抑え込んだ。ここまで来ると本当の勝負師と言える。

デビューから先発だった彼を、セットアッパーに配置転換した監督、コーチの決断も素晴らしい。まさに持ち球によっての適材適所であったように思える。もともと持っていた資質を素直な心と探求心で洗練させ、鮮やかな輝きを放っている。(2021年4月7日付紙面より)

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がんを患った小谷氏が最初に入院した7年前の晩秋。唐川は真っ先に見舞いに駆けつけた。「看護師さんが『格好いい方ですね』って驚いてたな。誰から聞いたか分からないけど、1人でオレの所に来るのは気が引けるはず。優しい子だなと思ったよ」。

人物を見抜く目に長けた名伯楽は理解した。「2軍で一緒にやってことを覚えていたのかな。人の気持ちが分かるから、一流のピッチャーになったということだ」。【宮下敬至】