ポスト赤星は実は飛ばし屋だった。阪神マット・マートン外野手(28=ロッキーズ)が沖縄・宜野座キャンプ2日目の2日、フリー打撃で超特大の150メートル弾をかっ飛ばした。アベレージヒッターの触れ込みだったが、左中間や右中間を抜く打球に加え、13本のアーチを披露。「イメージが違う」と巨人や中日の007をうならせた。「1番中堅」の構想を抱く真弓監督にとっては、まさに1発のある1番としてスター選手となった自身の再来のような助っ人だ。マートンこそがトラの優勝のカギを握る。

 グングン伸びた打球はバックスクリーン左横、高さ15メートルの松の木の枝を直撃した。推定飛距離150メートル。これほど大きな打球を飛ばすのは、ブラゼルか?

 打球の主は、ポスト赤星として「1番中堅」が期待される、好打者のイメージが強いマートンだった。

 「まだ初日で全力ではない。でもよく飛んだね。アトランタでも打ってきたけど、雨で室内ばかり。久々の外で気持ち良かったよ」

 来日初の屋外フリー打撃で、周囲のイメージを一変させた。巨人ラミレスのような下半身のどっしりした構えから、並んで打ったブラゼルも顔負けの67スイング13発。しかも右翼へ1本、中堅へ3本、左翼へ9本と広角に打ち分けた。あと数10センチで柵越えというフェンス直撃も5本。左中間、右中間を鋭いライナーで抜くなど、25本の安打性(打率換算で3割7分3厘)を放ち、最大の武器である確実性も証明した。

 和田打撃コーチは「アベレージとパワーを兼ね備えている。(真弓)監督みたいに1番でガツンといけるタイプかもしれない」とうなった。真弓監督は今も初回先頭打者本塁打のセ・リーグ記録(38本)を持つ。日本一に輝いた85年、恐怖の1番打者で大暴れした真弓明信の再来の予感だ。

 自慢の1発がある。ロ軍時代の昨年5月6日、6番左翼で先発したジャイアンツ戦。あのランディ・ジョンソンに値千金の1発を浴びせた。1-0が続いた緊迫の5回。スライダーを左翼席に運んだソロでチームは勢いづき、勝った。「300勝以上して殿堂にも入るはずの投手から打てたのは自信になった」。昨年はそれが唯一の本塁打。メジャー5年間で29発も、いい意味で当てにならない数字だ。

 衝撃を受けたのが巨人、中日の007だ。「ラロッカ(オリックス)タイプ」と表現した巨人田畑スコアラーは「(守備側が)前に出て下がるぐらいだから打球が伸びてる」と証言した。本人は「打順や守備位置は監督が決めること。チームに必要なことをきっちり準備して前向きにやっていくよ」と意に介さない。

 中堅は米国でもほとんど経験がない。だがこの日初めて受けた屋外ノックでは、まずまずの動きを披露した。田畑スコアラーは「赤星に比べ守備や走力面は落ちるのでは」と見逃さなかったが、右翼に回す選択肢もある。打順は中軸となるかも知れない。飛ばし屋といううれしい誤算が、攻撃の選択肢を広げることは間違いない。

 [2010年2月3日11時36分

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