<ソフトバンク1-1日本ハム>◇17日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクが、劣勢から延長11回ドローに持ち込み、優勝へのマジックナンバー17を今季初めて点灯させた。1点を追う9回、完封ペースだった日本ハム・ダルビッシュから先頭の内川聖一外野手(29)が左前打で出塁。1死二塁から5番松田宣浩内野手(28)が同点三塁打を放った。松中、小久保が故障離脱する中、新世代リーダーたちがけん引。最短で28日の日本ハム戦でリーグ2連覇が決まる。

 屈辱を力に変えた。ダルビッシュに手も足も出ないまま迎えた9回。プロで初めて第1打席から3打席連続三振だった内川が意地を見せた。148キロ内角ツーシームを左前に運ぶ。ここからムードが変わった。

 1死二塁となって5番松田が続く。2球目の低め148キロツーシームをうまくすくい上げた。打った瞬間にダルビッシュが顔をしかめる右翼越えの適時三塁打。ついに同点とし、粘りの延長11回ドロー。優勝マジック17が点灯した。

 この日、小久保が首痛の再発で登録抹消。松中は右膝を骨折し、杉内は左肩の違和感で離脱中。長年支えてきた主力たちが不在の危機でもチームを失速させなかった。20代の新世代リーダーたちが、V進撃への原動力になっている。

 内川

 3打席目までは自分の中の引き出しを出しながら打ったけど、それを上回られた。(4打席目は)ちょっと打ち方を変えた。気持ちで打ったわけではない。

 松田

 しっかり前で捉えることができた。これまで打線は小久保さん、松中さんに頼っていた。いなくても、しっかりしていかないといけない。

 08年にセ首位打者を獲得した内川が今季からFAで加入。カブレラ、細川も含めて大型補強を敢行。優勝を義務付けられたシーズンで内川は打ちまくっている。右太ももの故障で一時離脱したため規定打席に満たないが打率3割3分8厘をマークする。

 内川

 何も緊張感のないところで戦うよりも、こういうところでプレーすることにやりがいを感じる。

 松田は内川に刺激されるように今季急成長を遂げた。09年に右手甲を骨折、昨季は左手首骨折とけがに泣かされてきたが、今季は川崎、本多とともにフルイニング出場中。本塁打22本はリーグ2位と6年目の本格ブレークを果たした。

 1歳年上の内川が本塁打を打った時に松田が真っ先にあごタッチをするなど、気の合う2人。左打ちの立花、藤井両打撃コーチが松田に徹底指導し成長につなげたが、藤井コーチから内川は「右打者の気持ちの奥底までの部分は左打ちには分からない部分もある。相談に乗ってあげてほしい」と頼まれた。一時は不振に陥った松田の良き相談相手となったのが内川だった。

 大型補強と現有戦力の相乗効果でチーム力は格段にアップ。主力の故障続きでも動じないほど戦力は分厚い。秋山監督は「よく追いついたね。ダルビッシュはうちが相手だと本当にいいピッチングをするな。マジックは関係ないよ」と気を引き締めた。序盤から展開した日本ハムとマッチレースもゴールは見えた。「マジックを減らしていくことでワクワクする部分もある」と松田。歓喜の瞬間はもうすぐだ。【奈島宏樹】