<全日本大学野球選手権:神奈川大3-1仙台大>◇13日◇準々決勝◇神宮

 東北勢最後のとりで、仙台大(仙台6大学)が神奈川大(神奈川)に敗れ、4強入りを逃した。最速152キロの右腕エース熊原健人(3年=柴田)が、立ち上がりに先制点を許すなど6回1/3、3失点でKOされた。打線は3安打1得点に終わった。初出場で全国1勝を挙げての8強入り。収穫と課題をつかんで、秋の全国舞台、明治神宮大会を目指す。

 仙台大・熊原が感極まった。試合後の囲み取材。「先輩たちに助けられて…」。そう言うと、タオルで目を覆った。2年前の入学時はストライクが入らず、バント処理などのフィールディングもままならない投手だった。当時の主力投手や現4年生の左腕野口亮太(前橋商)らから多くの助言や指導を受け、たどり着いた全国大会。右腕エースは負けた悔しさ以上に、感謝の気持ちを伝えたかった。

 初回、いきなり初球を中前に安打を運ばれた。2死一、二塁から適時打を浴びて先制点を献上し、出ばなをくじかれた。1-1の6回には連打で勝ち越し点を許した。7回は適時二塁打を打たれ、3点目を奪われたところで降板。「(厳しいコースに)投げ切れなかった時に失点してしまった。自分の弱さが出た」と、要所での詰めの甘さを反省した。

 敗れはしたが収穫はあった。「速球、フォークを低めにコントロールすれば簡単には打たれない。自信になった」と胸を張った。11日の初戦(2回戦)福岡大戦でそのフォークを多投し、低めに集めて完投勝ち。この日スタンドで視察した巨人榑松スカウトは「落ちるボールがいい。日々、進化している。来年が楽しみ」。今大会で全国デビューした3年生右腕に、プロの評価は上がった。

 67季ぶりリーグ制覇の原動力となり、手にした全国1勝。あこがれの神宮のマウンドにも立った。「大きく成長させてくれた舞台。楽しかった。また戻ってこられるように」と言った。20日から大学日本代表候補合宿(神奈川・平塚)に参加し、再び全国レベルを肌で味わう。「自分はまだまだ未熟。いいところを持って帰りたい」。候補合宿、秋の明治神宮大会へ、流した涙を無駄にはしない。【久野朗】