則本キーマン、牧田ストッパー案も浮上/WBC対談

ドジャースタジアムの写真をバックに、No.1を宣言する山田氏(左)と権藤氏(撮影・宮崎幸一)

<権藤博氏×山田久志氏>(上)

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の新旧投手コーチが、世界一奪回への激論をかわした。3月7日開幕の第4回大会を戦う権藤博投手コーチ(78)と、世界一になった09年第2回大会で投手コーチを務めた山田久志氏(68=日刊スポーツ評論家)が、本番を想定した戦い方について対談した。則本をキーマンに挙げ、牧田のストッパー起用案も浮上。上下2回にわたり掲載する。【取材・構成=寺尾博和編集委員、宮下敬至】

 権藤 先発は大谷、菅野、則本、石川、まずはこの4人で回していこうと思っている。後は2番手、3番手でどうつないでいくか。

 山田 キューバとの初戦は大谷、続くオーストラリア戦は菅野ですね。どちらも通用する。個人的にはポイントは則本をどう使うかだと思ってます。WBCって球数制限のルールがある異次元の野球ですからね(笑い)。

 権藤 そう考えると大谷、菅野といっても、3回、もしくは4回で交代だろう。それに速球派はファウルされるケースが目立つし、球数が多くなるのも想定しておかないと。

 山田 大谷とはいえファウルされるでしょうし、そう簡単に三振はとれないかもしれません。菅野は打ちとる投球ができるけど。

 権藤 09年大会はどうだったの?

 山田 まず先発は、松坂、岩隈、ダルビッシュを3本柱に決めました。だから本来は開幕戦はエースの大輔が先発です。しかし、初戦は中国で、絶対2戦目の韓国に勝ちたかったから、開幕がダルビッシュ、韓国に大輔というローテーションを組みました。

 権藤 メンバーにもぐり込ませたかったのが藤浪なんだよ。昨年11月強化試合のオランダ戦で本塁打を浴びたが、やっぱり球は速い。藤浪は先発とかではなく、どこか味が出そうなところで使いたい。

 山田 中国戦で先発させる手もある。ただ立ち上がりが良くないし、球数が多くなるのが気掛かり。

 権藤 とにかく試合を崩さないようにやっていくしかない。第2先発を立てた後は、増井、宮西、秋吉、千賀、岡田、平野らでまかなっていかないといけないだろうね。

 山田 当時も左の救援が不安でした。中日組の辞退で中継ぎで岩瀬、浅尾が使えなくなった。内海、山口もいましたが、先発要員の杉内にリリーフに回ってもらった。貢献度では杉内。そういう意味では左のパワーピッチャーがほしかった。杉内の役割を、松井ができると楽になりますが。

 権藤 今回の人選はバラエティーに富んだと言われるが、個人的にはあまり右左とか関係なかった。秋吉はどちらにも通用した。千賀はボールが暴れるが、フォークが恐ろしい。牧田は…面白いよね、どこで使うか。特に下手投げは相手打者は合わない。そういえば分かるでしょ(笑い)。

 山田 先発と違ってリリーフって春先はなかなか上がってきませんからね。わたしの時もそれでダルビッシュを抑えに回した。今回のメンバーでいうと、藤浪が中継ぎで使えればしめたものですが。

 権藤 今回はダルビッシュや球児のような絶対的といえる投手がいない。誰をダルビッシュにして球児にしていくか、ですよ。

 山田 先発から2番手が頑張って、競っている展開にしておかないと。第2回大会は決勝ラウンドまでローテーションを作って、原監督に渡していました。途中で変わることはありましたけどね。抑えは誰とか考えてるんですか? 

 権藤 ストッパーはまだわからない。まだ見ていない投手も多いし、コミュニケーションをとって、実戦を終えてこれでいこうと決まると思う。

 山田 ストッパーは経験では平野ですが、則本も面白いでしょうね。フォークも、度胸もある。国際大会はハートです、強いハート。そして、準決勝、決勝の最後は大谷ですよ。

 権藤 試合になれば、ブルペンと連係するのも大事になる。毎イニング終わって電話で連絡するけど、それこそワイヤレスマイクでもつけてやりとりしたいくらいだ。

 山田 わたしは先発から9回まで、球数を想定して全部、継投のパターンを紙に書いて、それを原監督とブルペンの与田コーチに渡していました。ブルペンはそれを見て、準備させる。これが一番、ややこしいところです。

 権藤 今回は投手コーチはわたし1人だが、ブルペンには村田コーチがいるから、投手の順番は伝えておくつもりだ。それでも、次を抑えたらこれ、球数が来たらこれだぞと、毎イニング、終わるたびに電話するようにしないとな。それでも想定外のことが起こるだろうけど。

 山田 わたしも1度ブルペンを思い切り怒鳴りつけたことがあります(笑い)。最初は今までやっていた野球とは別もののゲームをやっているみたいでした。

 権藤 その継投の裏で、もし2回、準備して作ったら今日は登板なし、と決めておかないといけない。

 山田 普段のペナントレースなら9回から逆算していけばいい。でもWBCではまったく逆です。先から考えて、まずは5回くらいからどうつないで、取捨選択していくかですね。

 権藤 しかし、9回に投入するといっても、8回にならないと見えてこなかったりする。9回のためにずっと頑張ってくるという継投ではない。

 山田 権藤さんがいい投手からつぎ込んでいくと話しましたが、そういう感覚でないとダメでしょうね。最初の東京ラウンド、ここを乗り切ってしまえば、ジャパンは必ずまとまります。ぜひドジャースタジアムにナショナルフラッグを掲げてください。