侍筒香、世界一へ新相棒 確実性重視「3冠バット」

DeNA筒香は三上のブルペン投球の打席に立ちバットを構え感覚を確認する(撮影・足立雅史)

 “3冠バット”で世界一だ。侍ジャパンの4番筆頭候補、DeNA筒香嘉智外野手(25)が9日、ニューバットでワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場することを明言した。打率アップにつなげるため、芯の位置をわずかに下げた特注バットを体になじませた。昨季、打点と本塁打の打撃部門2冠を獲得した筒香が、世界一と3冠王を獲得する日も夢ではなさそうだ。

 こだわりの相棒のわずかに削った芯の部分を、筒香は何度もグッと握りしめた。隣には、イチローのバットも手がける職人、名和民夫氏(49=ミズノテクニクス)だ。特注バットの最終確認をするため沖縄にやってきた同氏に手応えを伝え、「今年はこれでいきます」と明言した。

 1月18日、岐阜・養老のバット工場に足を運んだ。「工場でちょっとずつ削っていただいて、自分の体が変わってきている中で、僕と名和さんの感覚が一致した。すごくいい」と振り返った。WBCを見据えてキャンプインと同時に使い始め、徐々になじませてきた。

 バットは長さ33・5インチ(85・09センチ)重さ約880グラムで、素材のメープルは昨季と変わらない。わずかに変化を加えたのは打撃部だった。手がけた名和氏は「わずかに細くすることで、トップバランスを手前(グリップ方向)に持ってきた。バットを球に当てる確率を上げるということ」と説明。バットの芯の位置をミリ単位で動かすことは「ほとんど感覚的な部分」だというが、それだけ緻密にこだわる領域に、筒香は立っている。

 昨季は44本塁打、110打点でトップに立ったが、打率は3割2分2厘で首位の巨人坂本(3割4分4厘)に届かず3位だった。思惑通りバットに当てる確率が上がれば、セ・リーグでは31年ぶりの3冠王も夢ではない。

 日本ハム中田が左手首を負傷し、筒香が侍ジャパンの4番を務める可能性が極めて高い。「誰もが世界一に向けてやる。そういう大会」と、その責任を重く受け止めている。吉兆もある。名和氏は、2度目の世界一となった09年WBC決勝韓国戦で、奇跡の勝ち越し打を放ったイチローのバットを手がけている。筒香は「目標はもちろん世界一。その先に何かがある」と言い切った。世界の頂点の先にある3冠王。筒香には、はっきりと見えている。【栗田成芳】