侍菊池の好守「どれだけ投手うれしいか」黒田氏

試合前、テレビ放送ブースからグラウンドを見る黒田氏(撮影・山崎安昭)

<黒田博樹氏の侍ジャパン随行記>

<WBC:日本11-6キューバ>◇1次ラウンドB組◇7日◇東京ドーム

 広島とドジャース、ヤンキースで日米通算203勝を挙げ、昨季限りで現役を引退した黒田博樹氏(42)が東京ドームでキューバ戦勝利を見届けた。日刊スポーツに独占掲載する「侍ジャパン随行記」も開幕。いきなり1回、昨季までのチームメート菊池涼介内野手(26)がピンチ拡大を防ぐ二塁での好守をみせたことにうなずいた。終盤の打ち合いを制したことで、チーム一丸の姿勢が深まると期待を膨らませた。

 長い試合となったけれど、勝てたことがこれ以上ない結果だと思う。短期決戦の国際試合の初戦が持つ意味はとても大きい。勝たないことには次へ向けた反省もできない。投手陣は失点を重ねたものの、初登板という難しさがあった。加えてイニングの間合いの長さや点差など、目立たない難しさもあっただろう。

 だからこそ、先発石川が1回に23球を要しながら、4回1失点と試合を作ったことが大きい。もっとシンカーを使う印象があった。レギュラーシーズンであれば、決め球が本来の精度ではなければ長いイニングを考えて修正できるが、WBCは球数制限がある。その中で、きっちり4回を投げ切ったことに価値がある。個人的に初戦の先発が日本ラウンドの流れを占うと思っていた。初戦から早期降板となると、投手の使い方が繰り上げられる。石川が投手陣全体にいい流れを生んだ。

 試合の中で大きなポイントとなったのは、1回のキク(菊池)のプレー。投手が浮足だっているところで難しい打球を簡単にゲッツーに取ってくれると、どれだけ投手はうれしいことか。あの守備が試合を締めた。あれがなければ試合はもっともつれていたかもしれない。9回の二ゴロも簡単なように見えるのもキクだからだろう。抜けていたら嫌な展開になっていた。ところどころで彼の守備がポイントになった。

 1回の併殺がフォースプレーであれば、デスパイネと勝負しなければいけない状況だった。併殺になったことで投手心理、消耗度は全く違ったものとなった。ポジショニングだけでなく、集中力が持続している。常に1歩目が早い。マウンドではなく、外から見るとよりそう感じる。

 また、日本代表の特長でもあるチーム一丸という姿勢も感じられた。特に青木の存在が大きい。初ヒットは、出ないと、なかなか出ない。それを1回に簡単に打って得点につなげた。外野守備もだが、ただ1人参加している大リーガーの存在感が違った。

 また、4番の筒香も見ていて熱くなるものがあった。1回の先制打は彼らしい会心の当たりではなかったが、詰まりながら先制打となった場面からも伝わってくるものがあった。短期決戦ではそういう姿勢が重要だとあらためて感じた。

 今後の試合で打線がここまで打てるとは限らない。一方で投手陣もこれだけ毎回打たれるわけじゃない。今日は結果的に打線が打って投手陣を助けた。今後は逆の試合も出てくる。よりチーム一丸となって頑張ってほしい。