元侍上原浩治がお墨付き「菅野なら大丈夫だから」

屋外での練習を終え、トレーナーに記念写真を撮ってもらう、左から松井裕、菅野、則本、藤浪(撮影・加藤哉)

 【グレンデール(米アリゾナ州)17日(日本時間18日)】元祖・国際大会の鬼から金言だ。カブス上原浩治投手(41)が、第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝に先発する菅野智之投手(27)へメッセージを送った。日本代表はこの日、ドジャースのキャンプ施設で渡米後初の練習。同地でのオープン戦登板のため偶然にも再会した上原は、06年第1回WBC準決勝の韓国戦に先発、7回無失点の快投で世界一へと導いている。相手に関係なく、自分の投球に徹する重要性を説いた。

 意外な男がひっそり待っていた。上原はホワイトソックスとのオープン戦に登板予定があり、同じ施設で練習した侍ジャパンに遭遇した。「みんな集中してる。邪魔をしたら悪いから」と、クラブハウス手前に停車していたカート後部座席に身をかがめ、引き揚げてくる選手を激励することにした。

 こんなところに…驚く侍たち。増井には「オレと同じ背番号19か。頑張ってな」。内川のアゴをなで「御利益あるから」とほぐした。自分の登板が迫り、数人としか接触できなかった。「菅野はまだ?」。最後の最後、ほんの少し会話はできた。腰を据えて話すことはできなかった。2次ラウンド・キューバ戦、4回4失点の投球を見ていた。「知らない選手ばかりになったけど…」。巨人の19番とエースの肩書を引き継いだ後輩に、伝えたいことがあった。

 「東京ドームから屋外。もちろん乾燥や気温の違いもある。アリゾナとロサンゼルスは、また違う。でも、ボールや球数制限なんかを気にして、神経質になってはいけない。とにかく自分のピッチングに集中すればいい。自分のボールを信じて、勝負すれば大丈夫。菅野なら大丈夫だから」

 雑念をなくし自分の土俵で投げる。国際試合無敗の鬼が、経験から導き出した極意だ。「オレもそうだったよ。韓国」と続けた。第1回WBC準決勝。1、2次リーグとも1点差で敗れた宿敵を7回無失点に封じ込めた86球。常にストライク先行、直球とフォークボールで淡々とアウトを刻み、最高の上げ潮で決勝へつないだ。

 平地で強めのキャッチボールを行い感触を確かめた菅野。ボールの違和感は「今のところ感じない。大丈夫です。いい準備ができれば」と言った。上原は「日本が勝ち上がってくると思っていた。代表のユニホームを着て練習する。手に入ったらね。ホントよ」と笑った。剣が峰を越えたから分かる日の丸の重さ。菅野が上原に続く。【宮下敬至】

 ◆F組の行方 F組は2勝目を挙げたプエルトリコの1位通過と、ベネズエラの敗退が決まった。1勝1敗で並んだドミニカ共和国と米国は、19日(日本時間)に直接対決。勝った方がF組2位となり、E組1位の日本と準決勝で対戦することになる。