侍散る、また準決の壁 日本野球の限界教えられた

9回裏2死、空振り三振で最後の打者となった松田は、喜ぶ米国ナインを背にぼうぜんと立ちつくす(撮影・菅敏)

<WBC:侍ジャパン1-2米国>◇準決勝◇21日(日本時間22日)◇ドジャースタジアム

 世界一奪還への挑戦が終わった。侍ジャパンが、第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝のアメリカ戦に臨み、1-2で敗れた。先発菅野智之投手(27)が6回1失点の好投。クロスゲームに持ち込んだが、内野陣にミスが重なり失点し、打線も散発4安打と湿った。2大会連続で決勝進出を逃し、日本野球は大きな転換期を迎えた。小久保裕紀監督(45)は監督を退く。

 雨のドジャースタジアムが日本野球の限界を教えてくれた。4回1死。アメリカの3番イエリチが、セカンド菊池の正面に強いゴロを打った。「天然芝で滑るのは頭には入っていたけど、イレギュラーに反応できなかった」。守備範囲と強肩を根拠とし、外野の芝生に位置取りしていた。

 アンツーカーとの境目でバウンドが微妙に変わり、かつ、ぬれた芝生が微妙に球足も変えた。WBC球がグラブと右太ももをかすめ中堅まで転がった。2つの進塁を許し先制打への道筋ができた。敗退の1点もダイヤモンド内の過ちで献上した。同点の8回1死二、三塁。もちろん前進守備を敷いた。サード松田の正面にA・ジョーンズのゴロが来た。慎重に…の思いが、運んだ足を打球の数メートル手前で止め、そろってしまった。「グラブに入っていればホームに投げられた」。三塁のクロフォードは、ファンブルした瞬間セーフと分かるスタートを切っていた。

 ワールドシリーズ制覇の経験がある敵将リーランドは、勝つすべを熟知するリアリストだった。準決勝から採用されたリプレー検証を5回までに4度も使い、涼しい顔で試合を止めた。メジャーNO・1の飛ばし屋スタントンが8番に座る打線に、変則の実力派が並ぶブルペン。リズムを渡さずクロスゲームに持ち込めば、投打で最後に上回ると読んでいた。

 陽気な坂本勇がダッグアウトで突っ伏した。「1-0」でしか勝てない絶望的な力の差があった。「準決勝は雨天コールドがある。早め早めに試合を運ぼう」。小久保監督も現実を追い、勝機を探った。1回無死一塁の状況が来たら送りバントをすると決めていた。シナリオ通りの状況は作るも、青木、筒香が凡退。菊池のソロ本塁打以外は強い打球を打てず、動くボールにゴロの山を築いた。散発4安打。ミス絡みの2点は重すぎた。

 小久保監督 ミスをした方が負けるが、責めることはできない。日本は人工芝でのプレーがほとんど。あれだけの選手たちが芯で捉えられない。動くボール、威力がワンランク上。フォーシーム主体のリーグでプレーしている。どこで訓練すれば? となる。

 「すべて自分の責任」と背負ったが、誰が監督でも変わらない。世界に配信される公式会見で、正直に潔く打ち明けた。

 パワー不足は言うまでもない。天然芝に苦労するなら人工芝をはがし、土のグラウンドを増やし、練習するしかない。ボールの対応に苦労するなら、意図的に品質を変えてでもWBC球と全く同じにそろえるしかない。動くボールを操れるよう幼い頃から技術を磨き、個性豊かな投手を育てるしかない。日本人メジャーリーガーが所属に何の気も使わず参戦できるよう、侍ジャパンの地力を高めるしかない。課題を看過すれば世界との差が開く。今のままでは、頂点に立てない。【宮下敬至】