【那須川天心コラム】壊すと作るの繰り返し…勝負しないで生きるのって生きていることに入らない

自身の新聞を持ってポーズを決める那須川天心(撮影・田島優大)

<天心新聞>

ボクシングWBC世界バンタム級1位の那須川天心(27=帝拳)が自ら編集長を務める不定期コラム「天心新聞」を日刊スポーツの読者にお届けします。4月11日、東京・両国国技館で元世界2階級制覇王者フアンフランシスコ・エストラダ(35=メキシコ)との同級挑戦者決定戦で9回終了TKO勝利。見事に再起を飾った那須川が新たにコンビを組んだ葛西裕一トレーナー(56=GLOVESジム会長)との関係性などを明かしています。第7回のテーマは「変化」です。

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エストラダ選手との試合はみてくれたかな。井上拓真選手との世界戦から5カ月ぶりの試合で、無事に勝ちました。試合後に「前回と全然、違った」という反応をもらって。多分、僕のことはボクシング業界も楽しみになったんじゃないかな。文句を言う人、ずっと応援してくれる人、記者の方、今まであんま興味を持っていなかった人も「何か面白いかも」って感じてもらえたかなと。

自分で入ったことない領域でエストラダ選手と戦った感覚だった。距離が1センチ違うだけで全然違うし。それを練習で日々、逃げずに立ち向かっていったというのが大きかった。いつもだと自分の中で1カ月前か3週間前には「こうやっていこう」と戦い方を決めてきたけど、今回は3日前まで決めなかった。逆にそれがすごく良かった。直前まで「まだできる」「まだいける」というのが続いていた。不安、恐怖、ワクワク…何とも言えない感情がずーっとあったというのが、すごく大きな成長だったと。これは今後の試合だったり、人生だったりで、すごい大きな教訓になったと思う。

本当は2月ぐらいに米国で合宿する計画があったけど、いろいろありなくなった。その頃かな、葛西さんとのコンビでいこうと固まったのは。昨年末から葛西さんにもミットを持ってもらって、自分の中で確信的なものはあった。昔を思い出すじゃないけど、最初から手応えがあった。キック時代に葛西さんに毎日ミットを持ってもらったり、一緒に練習していた訳ではなくて。長くやればどうなるのかと思ったけど、やってみたら自分も思った通りというか、思った以上というか。安心感があった。

本当にお笑い芸人のぼけと突っ込みのように、両方いないといけないコンビみたいな。2人だけの「あうん」の呼吸というのが近いかな。セコンドの葛西さんは「こうして、こうしろ」という決めごとより、どう動くかを考えられるワードを使ってくれる。普通なら「右を打て」と指示されれば右を打つけど、葛西さんは「右を動かせ」と言う。そうしたら勝手に動かすし、打つだろうと思ってくれていたみたいで。

パンチを打つための起点のワードをチョイスしてくれるから、7ラウンドの右アッパーもパッと出せた。特別に練習したからとかでなく、選択肢があるワードで言われるとひらめくみたいな。葛西さんから変化とも多く言われて。多分、アッパーを打てと言われたら、アッパーだけを狙っちゃう。でも変化と言われると、いろいろ動いて変化をつけようとする。変化したら、いろんなパンチを打てる位置にいくことができる。

トレーナーは技術を教えるだけじゃない部分も大きいと思ってる。何か「導いてくれる」というイメージ。この人といると何でもできる気がするという信頼感みたいな。自分は割と周りの人に「導いてくれる人」と思われている。この人だったら、何を言っても大丈夫だなとか、信用してもらっている存在だと。逆に僕が「導いてくれる」と感じる人ってあまりいない(笑い)。その数少ない1人が葛西さん。これが続けば続くほど自分も伸びていくだろうという手応えもある。

エストラダ戦まで自分の持っている概念、思っていることをすべて捨てるじゃないけど、良いと思っていたものを全部壊した。壊して新しいものができて、また壊して…その繰り返しだった。苦しさもあるし、楽しさもあったけど、それでこそが人生を彩るもの。自分の魂を震わせるのが生きている証拠だと思う。勝負しないで生きるのって、生きていることに入らないと思う。毎日何が起こるか分からないし、新しい発見、成功や失敗もあるし。でも、それがあるから人生を進めている感が出る。

拓真選手が勝ちましたね。自分にはハイリスクな試合に勝ってつかんだ挑戦権という切符がある。自信を持って切符を握りしめて挑みたいなと思う。しっかりとリベンジしたい。まあ拓真選手とやらないとなっても、いつかどこかでやるし。僕が世界ベルトを取って逆指名しますし。その時も、あのサムライベルトはしっかりと懸けてほしい。あれは格好いいし絶対に欲しい(笑い)。

天心新聞も2年目に入ったので掲載してもらう日刊スポーツを訪問して新聞の編集長に会ったり、レイアウトしたり。自分も編集長なんでね(笑い)。印刷工場とか、何か映画とかドラマとかでしか見たことないような光景だったな。昔の映像とかにした出てこないような…それが昭和の味というか。社員の方たちは自分の持ち場でやるべきところをやっている印象で、僕のモットーと同じだと感じましたね。

今の時代、なかなか新聞を読む機会が減っていると思うけど、紙の良さはあると思う。新聞の良さをもっと伝えていきたいと思うし。伝える側もしっかりと発信していかなきゃいけないし、読みたくなるものを提供しかなきゃいけないなと。編集長として心境の変化もありましたね。(「天心新聞」編集長・那須川天心)

那須川編集長が「天心新聞」で語ってほしいテーマを募集しています。日刊スポーツの読者に向け「新聞を読む世代の方が僕のことをどう思っているのかも知りたいです。一緒に盛り上げてもらえたらありがたいです」とメッセージ。応募は、専用サイト(https://quiz.nikkansports.com/answer/pc/1219)まで。または、氏名、連絡先、語ってほしいテーマ、ご意見などを明記のうえ、封書、はがきでも受け付けます。〒104・8055(住所不要)日刊スポーツNEWSスポーツ部「天心新聞係」まで。