那須川天心、リベンジならず 10カ月間の過酷トレに手応えも「こんだけやっても無理か」

試合後の取材に応じる那須川天心(撮影・河田真司)

<プロボクシング:WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇27日◇トヨタアリーナ東京

“格闘技の神童”がリベンジに失敗した。WBC世界バンタム級1位の那須川天心(28=帝拳)が、昨年11月の同級王座決定戦で判定負けした井上拓真(30=大橋)とのリマッチに臨み、7回に左ストレート一撃でダウンを奪ったが、0-3の判定負け。格闘技人生で初黒星を喫した宿敵に借りを返せなかった。

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試合終了のゴングと同時に那須川は左手を突き上げた。「ダウンも取ってダメージも与えた。自分の中では優勢。負けた気はしなかった」。それでも発表された結果は前回と同じ。「めちゃくちゃ悔しい」。リングを下りる時には自然と涙が出ていた。

勝機はあった。7回開始早々、左ストレートの一太刀でダウンを奪った。残り時間は十分。フラついて立ち上がった井上に、眼の色を変えてパンチを束を浴びせたが、防御技術を駆使して耐える王者にとどめを刺すことができなかった。那須川は「経験ですかねえ」と投げやりな口調でこのシーンを振り返った。

「やられる覚悟はある」。試合前、独特の表現でリベンジにかける思いを口にした。むろん負けるつもりはない。被弾を恐れずに先に殴り込み、自ら活路を切り開いて決着をつけるという決意表明だった。その言葉通り、最後まで前に出てダウンも奪った。手応えもあった。でもポイントにはつながらなかった。

「自分の格闘技はできたけど、ポイントゲームで負けた。相手にダメージを与える、倒しにいくだけがボクシングじゃないんだ。ボクシングはこんなに難しいのかと思う」と那須川。葛西トレーナーも「主導権はこっちだったと思う。(井上が2-0だった)4回の公開採点もびっくりした」と不満を口にした。

昨年11月に井上に格闘技人生で初の黒星を喫した後、キック時代の中学生の頃にボクシングの手ほどきを受けた葛西氏にトレーナーを依頼。そこで得意ではなかった接近戦を徹底的に磨き、4月の再起戦では2階級制覇王者エストラダという高すぎるハードルをKOで超えてみせた。本人も確かな手応えを感じてリベンジを確信していただけに、試合後は「こんだけやっても無理か」と息を吐くようにつぶやいた。

今後については「今はとにかく分からない。いろいろ考えます」とだけ語った。過酷で困難な10カ月間、ずっと揺れ動く自分の心と闘い続け、最後まで逃げなかった。それでもベルトを巻くことはできなかった。神童の格闘技人生が正念場を迎えた。【首藤正徳】

◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日、千葉・松戸市生まれ。5歳で空手を始め、小学5年でジュニア世界大会優勝し、キックボクシングに転向。14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月にプロ6戦目で史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年からRIZINにも参戦。18年6月、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者・武尊を判定で撃破。23年4月に6回判定勝ちでボクシングデビュー。24年10月にWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座獲得。身長165センチの左ボクサーファイター。

★前回VTR WBC世界バンタム級王座決定戦(25年11月24日)で拳を交えた。1、2回に那須川はクリーンヒットを決めて好スタートも4回から井上が反撃開始。同回終了時点の公開採点は38-38のイーブンだった。中盤のペース争いはやや井上が優勢で8回終了時点の採点は2-0で井上がリード。終盤は那須川のパンチの精度が落ち、井上が手数で上回った。判定は2人が116-112、1人が117-111で井上が3-0で勝利を収めた。

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○…天心の弟でキックボクシングRISEの世界王者、那須川龍心(20)も現地で兄を応援。試合後には「(拓真は)長くやってるだけあってポイントの取り方がうまい、その見せ方がうまいなって思いました」と感想を口にした。それでも天心が拓真からダウンを奪った奮闘ぶりには大きな刺激を受けており「絶対にやり返してくれると思いますし、あそこまでできるっていうところを見せてもらえたんで。刺激を受けましたし(自分も)やるしかないと思いました」と話した。

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