「ボクシングやめて拳闘やる」井上拓真に敗れた那須川天心が世界のベルトより目指してるものとは

緊急非公式会見を行う那須川天心(撮影・野上伸悟)

プロボクシングWBC世界バンタム級3位の那須川天心(28=帝拳)が19日、都内で自ら主催した公式ユーチューブ企画「非公式会見」で2度目の敗戦から約3週間ぶりに沈黙を破った。判定負けした同級王者・井上拓真(30=大橋)との再戦(9月27日、トヨタアリーナ東京)をあらためて振り返るとともに「拳闘をやる」と今後のテーマを掲げた。

拓真との再戦に敗れた直後の会見で「僕の中では負けていない」と発言した那須川は「結果自体は受け入れているのか」の質問に「もちろんです。自分の手で決着をつけられなかったのが(敗戦の)最大の要因。今後はそこをしっかり受け止めてやっていかなければ」と即答した。

試合の映像は何度も見返したという。「7ラウンドにダウンを奪ったシーンは、ボクシングをやってきた3年間で積み上げてきたものがあの一発(左ストレート)に出たと思う」と振り返った後「あそこで倒し切るべきだった。そのツメの甘さが自分の弱さかな。この試合で自分の今後のテーマが大きく見えた」と明かした。

今後のテーマを聞かれると「“ボクシング”をやめて“拳闘”をしようと思う」と答えた。

日本では昭和20~30年代頃まで一般的にボクシングは「拳闘」と呼ばれていた。当時は技術や戦略よりも、文字通り勇敢に拳で殴り合って雌雄を決する敢闘精神が支持された時代。猛ラッシュで一世を風靡(ふうび)したピストン堀口は「拳聖」と呼ばれた。1952年に白井義男が日本人初の世界王者となった頃から、技術や戦略といった競技性も重視されるようになり、次第にボクシングという名称が定着した。

「昔の選手の試合を見ると“どっちが勝つんだ”といったワクワクみたいなものがすごくあった。それをまた取り戻したいというのもある。今は勝ち方を追求している、勝ち方を知っている選手が強いという方向になりつつある。そうではなくて、格闘技を見る人は日常にないものを見たいと思っていると思うので、そういうものをもっと追求していきたい」。那須川の口調が熱くなった。

「拳闘をする」とは倒すことを目的に、リスク覚悟で骨のきしむような打ち合いをすること。そこには自分の手で決着をつけるという覚悟がある。「(拓真戦の)最初の4ラウンドは自分の方がジャブを当てている印象があったけど(1人のジャッジの採点は)4ラウンドとられていた。採点は人の手に委ねているわけですから、そこに文句を言うつもりはない。自分の手で決着をつける選手にならないといけないと思う。どんどん倒しにいける選手になっていきたいと思うし、その方が面白いと思います」(那須川)

打撃戦になった拓真戦の会場は1万人の大声援で包まれた。その熱も刺激になった。「ボクシングはポイントを取り合う競技で、もちろんそれは僕も理解しています。その上でしっかりと戦いを見せないといけない。今回、本当に会場の熱、大声援がすごかった。選手同士の“倒したい”という気持ちのぶつかり合いが、熱狂を生む。だから今後はしっかりと拳闘をしていきたい」とも。

世界挑戦に2度失敗したが、世界のベルトに執着はない。「ベルトを目指して格闘技をやったことはない。あくまで自分との向き合いで、どう格闘技を面白く伝えていくか。2回挑戦して負けたのは本当に悔しいので、しっかりとやり返したいという気持ちはありますが、ベルトを取りたいとか、そういうところを目標にするというより、もっと強くなって熱を生む自分を、応援してくれる人にしっかり見せたい」。ベルトはないが那須川は拳闘家として、これからもボクシング界をけん引する決意だ。【首藤正徳】

★井上VS那須川再戦VTR(9月27日、トヨタアリーナ東京)序盤から右構えの王者井上が距離を詰めてワンツーを繰り出し、サウスポーの那須川は右ジャブから左カウンターを狙うハイレベルな攻防が展開。4回終了時の公開採点は2-0で井上が優勢。7回には那須川のワンツーでダウンを許した井上はロープ際まで追い込まれながらも何とかピンチ回避。ダメージがあるかに見えたが、8回以降も左フック、左アッパーなど手数を増やし、追い上げる那須川の反撃を振り切って3-0の判定勝利。