新日本プロレスのエース棚橋弘至(42)が13日、自身7冊目の著書『カウント2・9から立ち上がれ 逆境からの「復活力」』(マガジンハウス)を出版した。デビュー20周年を前に、本書で赤裸々に自身の経験をつづった棚橋に話を聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

著書『カウント2・9から立ち上がれ 逆境からの「復活力」』出版イベントでポーズを決める新日本プロレス棚橋弘至(撮影・鹿野芳博)
著書『カウント2・9から立ち上がれ 逆境からの「復活力」』出版イベントでポーズを決める新日本プロレス棚橋弘至(撮影・鹿野芳博)

もうだめだ、と思う経験は誰にだってあるだろう。プロレスでいうとカウント3を取られそうになった時。でも、力を振り絞ればすんでのカウント2・9から立ち上がることもできる。棚橋は、タイトルにそんなあきらめない力の大切さを込めた。同書は、メールマガジン「水道橋博士のメルマ旬報」で16年から連載している「逸材逸話」を土台にまとめたもの。ここ数年膝のけがなどで苦しんでいた自分の状況が赤裸々に書かれている

「生々しい。けがと欠場を繰り返したこの2、3年の記事を集めたので、けっこう弱音もはいてます。プロレスでいうところのカウント2・9という状況は、いろんな生活の中であると思う。恋人にふられてしまった、会社で後輩に抜かれた、とか。そういったなかでも、あきらめんなよ。棚橋がいるじゃないか。おれだったらこうするぜ、と。ハウツー本まではいかないんですけど、読んでくれたら、何かヒントになることが詰まってると思います」

今年、プロレスラーデビュー20周年を迎える。20代から体を酷使した代償で、この数年棚橋の体は故障を繰り返してきた。その苦しみも包み隠さず書かれている。例えば18年1月に膝を故障し、欠場していた時。ファストフードで暴食していた際に、涙が流れたという。そこからどう復活したかは本書を読んでほしい。醜い部分をさらけ出しているからこそ、言葉には重みと説得力がある。

「チャレンジ」と題した最終章では、プロレスラーとしての今後の夢も記した。『年齢だとかコンディションだとか、限界を決めてはいけない。言い訳を探してはいけない。これをした時点で成長は止まる』と自分自身を奮い立たせているようにも読める。

「自分に期待するのはすごく大事なこと。自分に期待をすると、モチベーションもあがるし、プレッシャーにもなる。ジムにいって練習しようとか、帰りは歩いて帰って体脂肪燃やそうとか、これ食うの我慢しとこうかとか」。律することで、エースとしてのプライドを守り続けている。

9日、ジェイ・ホワイト(左)にエルボーを浴びせる棚橋弘至
9日、ジェイ・ホワイト(左)にエルボーを浴びせる棚橋弘至

2月にIWGPヘビー級のベルトを失い、4月には左肘を負傷し、手術した。6月5日の両国大会で復帰し、同9日の大阪城ホール大会では勝利。どん底から少しずつ浮上しつつある。「厄年を抜けたと思ったら手術した。まだ、抜けてないんじゃないかと思った(笑い)。V字回復でもいい、Y字回復でもいい。ここから」。プロレスは生きざまを見せること。信条を胸に、再びの上昇を目指す。