女子プロレス界に新たな光が射した。10月17日、ロッシー小川社長率いる国内トップ団体スターダムが、新日本プロレスの親会社ブシロード傘下になったことが発表され、同日都内で会見が開かれた。12年に新日本プロレスを買収し、そこからV字復活を成功させたブシロード木谷高明取締役は「3年で5倍の10億を目指す」と成長を約束。来年4月29日に大田区総合体育館で約7年ぶりのビッグマッチを開催するほか、BS日テレ、TOKYO MXでのレギュラー番組も決定。積極的にPRを進めていく予定だ。

日本では過去にビューティ・ペア、クラッシュギャルズ、全女など女子プロレスのブームが存在した。しかし、70年代から長年全女中継を行ってきたフジテレビが02年に「格闘女神ATHENA(アテナ)」を終了し、中継から撤退。さらに全女が05年に解散。それ以来、女子プロ人気は瞬く間にしぼみ、マイナージャンルと化した。今回の件をきっかけに女子プロ人気は復活するのか。ブシロードの支援を背にスターダムがどう変化していくか、そして他の団体がどう動いていくか注目していきたい。

会見中、最も刺さったのがブシロード木谷氏の言葉だ。質疑応答で、スターダムの伸びしろについて問われると、こう答えた。「まずもったいない部分は、お客さんの年齢が高い。ほぼ男性しかいない。(過去に)女子プロレスが流行(はや)った時、やはり支えていたのは女子だった。女子が見やすい会場、大会にしたい」。女性や、若いファン層を取り込むことが今後の成長のカギになると語った。

女性ファンの少なさは昨年プロレス取材を始めて以来気になっていた部分だった。故井田真木子氏が記し、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「プロレス少女伝説」(90年)には、スター長与千種を熱狂的に追いかける少女たちの姿が描かれている。しかし、いま会場を埋めるのはほぼ男性だ。確かにビジュアル面で優れた選手も多く、試合前の歌のパフォーマンスと合いの手、売店でのやり取りの様子などを見ると男性ファンが多い理由は理解できる。ただ、その光景は異様だ。

そうした状況の中、会場で見かけるわずかな女性ファンはどんなことを思いながら観戦しているのだろうか。あらためて浮かんだ疑問を解決するべく10月28日、ツイッター上で女子プロ好きの女性に話を聞きたいと呼びかけた。すると、約20人の方が私に返信やダイレクトメールを送ってくださった。直接会って座談会をしたかったが、地方の方も多かったため断念し、LINEオープンチャットを開設。約40人の方が集まり、熱い意見を投稿してくださった。

「最初は男性だらけの中に入っていくのが嫌で帰ろうと思いました」など観戦時の苦い経験を明かしてくれた方もいたが、大半は男性だらけの環境でも気にせず試合を楽しんでいる様子だった。女子プロの魅力についての質問には「感情移入しやすい」「自分ができないからこその憧れ」「心身の痛み、努力が報われた時の喜びは男性レスラーより伝わってくる」など、同性だからこそ感じる部分を挙げる方が多かった。

そして、みなさんが特に熱望していたのがテレビ放送と女性限定興行だった。限定興行に関しては「女性ファンがこんなにいるんだよ、とアピールすることが大事」「会場にいくハードルを下げること」など。同性の仲間がいる安心感があれば、その後も会場に足を運ぶ可能性は確かにある。ブシロード木谷氏も会見の中で、従来の男性ファンを大事にした上で、女性限定興行をする価値があると熱弁していた。簡単ではないと思うが、スターダムに限らずぜひ多くの団体に実現してほしい。

肝心の試合の内容も充実しつつある。女子プロレス界の横綱ことセンダイガールズプロレスリングの里村明衣子は「女子のレベルは10年前に比べたらすごく上がっている。そして、世界的に女子レスラーが増えている」と話す。現在WWEやAEWなど米大手団体が女子の試合を提供していることもあり、世界的に女子選手への注目は高まっている。里村らトップ選手は海外の興行に引っ張りだこの状態だ。歴史ある日本の女子プロレス文化が再び花開く下地は、十分そろっている。【高場泉穂】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)