現在のボクシング界の勢力図は、完全な東高西低の構図が描かれる。関西のジム所属の世界王者はWBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(27=BMB)1人だが、関東での興行が主で「関西の王者」というイメージは抱きにくい。

言うまでもなく、関西はこれまで多くの名王者を輩出している。自分がかつて、担当していた中でも辰吉丈一郎、長谷川穂積、徳山昌守、そして大阪在住時の亀田3兄弟、井岡一翔ら。実力も個性もあった世界王者が存在し、関西での世界戦興行も常だった。

その当時に比べ、今は4団体が日本ボクシングコミッション(JBC)に認定され王者乱立と、見ている側、ファンにとってはその価値観を正しくすべき時代といえる。その中でも原点に戻るが、関西に世界王者不在はあまりに寂しい。救世主登場を願う上で、大きな期待を寄せているのが辰吉の次男、寿以輝(23=大阪帝拳)だ。

ここまで12戦全勝(8KO)と順調にキャリアを重ねるも、ケガが多く8戦目で世界をとったおやじに比べてステップアップに時間がかかっている。それでもスター性は自然に漂う。裏事情として日本、東洋太平洋のランカーに対戦を打診しても、相手にとってはまるで“うまみ”がなく、避けられてきた経緯がある。その中で次戦は、注目の一戦が組まれた。

12月17日にエディオンアリーナ大阪第2競技場で日本バンタム級5位の中村誠康(27=TEAM10COUNT)とスーパーバンタム級(リミット55・3キロ)の契約ウエートで8回戦を行う。初の日本ランカーとの対戦で勝てば日本、東洋太平洋の上位ランク入りは確実。ジムの吉井寛会長も「来年に向けて節目の試合になる」と明言した。

寿以輝は「決まってうれしい。(相手がランク)上でいいです。気持ちで負けない。自分の方がパンチあると思う。必ず倒して勝ちます」と宣言した。「カリスマ辰吉」の信奉者はいまだに多い。その期待を必然にかけられる。「重い」と思うが、関西ボクシング界の起爆剤としても次戦をステップに、来年は一気に駆け上がってほしい。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

7月26日、勝利した辰吉寿以輝(左)と引き揚げる父の辰吉丈一郎(撮影・上田博志)
7月26日、勝利した辰吉寿以輝(左)と引き揚げる父の辰吉丈一郎(撮影・上田博志)