刺激的なライバルがいてこそ、その競技は盛り上がる。レスラー同士だけではなく、プロレス団体同士もそうだ。今、団体間の“直接対決”が米国で、日本で熱くなっている。

10月2日、米プロレス界はライバル団体同士の「視聴率戦争」がスタートした。米最大の団体WWEのブランドNXTが9月18日から毎週水曜日、USAネットワークでの放送が始まった。これまでロウ、スマックダウンの2ブランドのみがテレビ放送される形式だったが、NXTというブランドもインターネット配信からテレビに切り替えた。そして10月2日からは新日本プロレスで活躍していた元IWGPヘビー級王者ケニー・オメガ、Cody、ヤングバックス、元WWEスーパースターのクリス・ジェリコが在籍するAEWが毎週水曜日にTNTでテレビ放送を開始。ほぼ同じ時間帯で視聴率戦争を繰り広げている。

視聴者数は11月中旬まではAEWが7週連続で勝利していたが、WWEは巻き返した。まず初代ユニバーサル王者フィン・ベイラーがNXTに電撃復帰。ロウ、スマックダウンの王者クラスが投入され、最近ではWWEインターコンチネンタル王者中邑真輔、WWE女子タッグ王者のカブキ・ウォリアーズ(アスカ、カイリ・セイン組)らもNXTに久々登場した。充実したテコ入れもあり、11月下旬は2週連続でNXTが視聴者数を上回った。WWEにとってWCW以来、18年ぶりのライバル団体の登場で、よりアクティブになっている。

そして、日本も。来年1月、新日本プロレスが4日、5日に東京ドーム大会を開催することに合わせ、国内業界2位を目指すと宣言しているノアが1月4日、5日と東京ドームに隣接する後楽園ホールで興行を開催する。既に4日はGHCヘビー級選手権(王者清宮海斗-潮崎豪)、GHCナショナル選手権(王者杉浦貴-マサ北宮)、GHCジュニアヘビー級選手権(王者HAYATA-小川良成)に加え、中嶋勝彦-マイケル・エルガンのシングル戦と王座戦を含め、話題カードを惜しみなく組んだ。対抗心を燃やしている姿勢が伝わってくる。

男子だけではない、女子もだ。新日本プロレスの親会社ブシロードの傘下に、人気の女子団体スターダムが入った。スターダムが女子の独壇場になりそうなムードが高まってきたが、女子団体マーベラスを率いる長与千種が8日の後楽園大会を持って代表取締役を辞任。裏方に専念することを明かした上で「必ず横に並びます」とブシロードと良い意味のファイトを宣言したばかりだ。

2020年のプロレス界は日米そろって“直接対決”でしのぎを削り、人気面を争う形になるのだろう。国内外関係のなく、業界全体の盛り上がりが、世間の注目度を上げていくことになるだろう。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)