大相撲にビデオ判定が導入されてから、夏場所で50年になる。

導入のきっかけとなった一番は、1969年(昭44)春場所2日目の大鵬-戸田戦。戸田が大鵬を押し出したが、その直前に戸田の右足が土俵外に出ていた。行司は大鵬の勝ちとしたが、物言いが付き、行司軍配差し違えで戸田の勝ちとなった。横綱大鵬の連勝は「45」で止まった。

しかし、ニュース番組の映像や新聞の写真がきっかけで誤審が判明。日本相撲協会に抗議電話が殺到する騒動になった。すでに協会はビデオ判定の準備を進めていた模様で、5月の夏場所から正式導入された。

あの取組後、大鵬は不満を言わず「ああいう相撲を取ったのが悪かったよ。別に審判部に抗議しようなんて気持ちはない。いつまでもクヨクヨしたってしょうがない」と証言している。

大鵬部屋で育った大嶽親方(元十両大竜)は言う。「なかなか言えることじゃない。大鵬親方らしい。格好いいですよね」。勝負判定は正確であって欲しい。一方で、大相撲の力士は、勝つことだけが仕事ではない。その生きざまを、好角家は見ている。【佐々木一郎】