幕内優勝の行方が混沌(こんとん)とする中、記録を打ち立てた序二段力士がいる。現役最年長の50歳、西序二段68枚目の華吹(はなかぜ、立浪)が、14日目に今場所最後の相撲を取った。負けて2勝5敗で終え、2場所連続勝ち越しはならず。しかし、1906年(明39)1月場所の鬼ケ谷以来、114年ぶりに50代力士として本場所を皆勤した。

思いもよらぬ形で金字塔が打ち立たれた。師匠の立浪親方(元小結旭豊)によると「もうそろそろ、という話も正直ある」と引退の話も出ているという。しかし「コロナの影響で延期になってしまって」。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、華吹が働く予定の職場の受け入れ態勢が整わず、引退時期が延びているという。結果的に快挙を達成。「できないことをできたのは本人も周りの人も喜んでいると思う。元気づけられた、という声も多いからね」と誇らしげだ。

現在はちゃんこ長として、立浪部屋の胃袋を支える。同親方は「こういう時に楽しみなのは食べることしかない。まだまだ若手の食育をして欲しい」と期待する。現役唯一の昭和入門の大ベテランは、新型コロナに負けずにまだ輝き続ける。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)