御嶽海の3度目の優勝、そして新大関昇進で幕を開けた22年の大相撲。年明け早々、角界にとって明るい話題が出たが、今年は他にも注目する力士がいる。

朝乃山(27=高砂)だ。昨年6月に新型コロナウイルス感染対策のガイドライン違反により6場所連続の出場停止処分を受け、7月の名古屋場所で復帰予定となっている。当時、大関だった地位は、3月の春場所(13日初日、エディオンアリーナ大阪)でついに幕下への陥落が確実。復帰予定の名古屋場所では三段目からの出直しとなる見込みだ。

朝乃山の現状を、朝乃山に近しい関係者から聞いた。違反行為は当然反省しているとして、今は復帰に向けて稽古に励んでいるという。中でも、昨年11月の九州場所で新十両昇進を果たした十両朝乃若から刺激を受けているとか。自身の付け人だった弟弟子が十両に上がったのを喜ぶ半面、土俵の外から見ていることだけしかできない状況に対して自身へのふがいなさを感じ、気合も入ったという。本場所期間中は毎日大相撲中継を見て、気持ちを高ぶらせているという。

今でこそ気持ちは前向きになってきたが、処分を受けた当初は角界を去ることも頭の中にあったという。昨年6月に処分を受けた頃に祖父が亡くなったといい、自らが心労などの苦労をかけたせいだと責めた。師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)に相談。「辛抱して頑張ろう」と声をかけられて踏みとどまったが、不幸は重なった。同8月、父の靖さんが急性心原性肺水腫で64歳で急逝した。またも自分を責めたが、今後への考え方は変わっていた。「相撲はやめられない。相撲から逃げない。父のためにもはい上がってやるという気持ちになった」などと周囲に心境を明かしていたという。

名古屋場所での復帰後も、いばらの道が待ち受けている。三段目からの再出発となれば、関取となる十両への復帰は早くても23年初場所か春場所。いくら大関経験者とはいえ、1年休場による相撲勘への影響は大きい。幕内復帰、そして大関復帰には相撲勘を戻すことも重要だが、かなりの忍耐力も必要となるはずだ。そのようなことは本人が百も承知か。多くの相撲ファンと同じように、記者も朝乃山が本土俵に戻ってくるのを待ち遠しく感じている。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)