井上尚弥ならシーサケットも問題ない/川島郭志の目

井上尚弥対アントニオ・ニエベス

<プロボクシング:WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦>◇9日(日本時間10日)◇米カリフォルニア州・スタブハブ・センター

 王者井上尚弥(24=大橋)が米デビュー戦をKOで飾り、6度目の防衛に成功した。挑戦者の同級7位アントニオ・ニエベス(米国)に対し、初回から攻撃的に出ると、ダウン経験のない相手から5回に左ボディーでダウンを奪取。6回に連打を浴びせると、同回終了時にニエベス陣営が棄権を申し出た。

 井上のパワーがすごかった。米国で売り出す第1戦で圧倒し、十二分に強さを見せつけた。初回からいつも以上にパワーを前面に、強引にどんどん前に出た。相手はガードを固め、警戒というか逃げ腰。勝敗よりいつ倒すかという試合で、ものが違った。

 左のジャブとボディーがよかった。ジャブというよりストレートで、1発1発にパワーがあった。4回は足を使い、6回はポーズで相手に来させようとした。KOしたい、米国で見せたい思いが強く、攻めに徹した。攻撃が最大の防御にもなっていた。

 ライトフライ級時代はパワーよりもテクニックが目立った。スーパーフライ級でナルバエスを倒した一戦からパワーが増した。階級を上げるとファイターになっていくが、井上は時間をかけてうまく上げている。

 ロマゴンに勝ったシーサケットは左だが間違いなく勝てる。バンタム級に上げても問題はない。スーパーバンタム級は身長もあり、パワーがどこまで通用し、スタミナがカギになる。最近世界王者が増え続けるが、首をかしげたくなる王者もいる。井上には本物として海外でも勝ち続け、ボクシングの価値を高めていってもらいたい。(元WBC世界スーパーフライ級王者)