村田諒太が判定対策、打ち返し徹底し当て逃げ許さん

パートナーのガードの上から鋭いパンチを打ち込む村田(左)(撮影・丹羽敏通)

 “当て逃げ”許さん-。ボクシングのロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級1位村田諒太(31=帝拳)が12日、22日の同級タイトル戦(両国国技館)へ向けた練習を公開。5月の王座決定戦で不可解判定で敗れたアッサン・エンダム(フランス)との再戦への作戦を明かした。要所に連打を集めて逃げる相手に対し、狙うのは打ち終わりの打ち返し。採点でも有利に運ばれないようにリアクションし、必勝を期す。

 70人以上の報道陣に見つめられての2回のスパーリング。村田の左の使い方に、明確な意図があった。外国人パートナーがパンチをまとめて打ち込んできた後に、すかさず左ジャブを返し、数発の切り返しを放つ。これまでは連打を受けた直後は、左腕を伸ばして相手を押し、距離感を作る傾向にあった。それが徹底してジャブに変わっていた。

 「前回は打ってきた後に、僕がいかずに終わった。そうしたら1-0になる。相手が打ち終わったら僕も手を出して、そのポイント分を帳消しにすることを考えないといけない」

 5月の第1戦。不可解な判定だったとはいえ、エンダムの手数を優位と見たジャッジがいたのは事実。角度多彩なパンチを浴びせられ、反撃する前に軽快な足回りで逃げられる場面も多かった。ブロックしきってはいたが、印象は悪い。そこで「1アクション」には1リアクションを重ね、マイナス要素を消す。

 もちろん、手数で勝負するわけではない。前回は2倍以上の手数の差があった相手と同じ土俵で勝負はしない。的中率が高い右ストレートを軸にした強打。手数は劣るも、高い守備力とスタミナで追い詰める基本線は変わらない。「右が当たれば間違いなく倒れる」と自信も深い。「帳消し」戦法は、KOで倒すことを大前提にした上で、さらに勝利をたぐり寄せるため。

 試合には、契約する米プロモート大手トップランク社を率いるボブ・アラム氏が訪れる。王座奪取後に米国での防衛戦プランも口にする大物に、「良い試合を見せたい。でも、先先と考えると僕の気持ちがどっかでぽきっといきそうなんで、終わってから考えましょう」とさわやかに受け流した。先には夢が広がるが、目の前を見る。「終わりがいつ来るか分からない。瞬間瞬間を生きるしかない。悔いがないように戦いたい」。技術だけでなく、メンタルでも水も漏らさない準備を怠らず、決戦を待つ。【阿部健吾】

 ◆ボクシングの採点基準 リングサイドに座った3人のジャッジが、ラウンドごとに10点満点の減点方式で行う。評価の基準は国や地域別、団体別でも統一されていないが、有効打と攻勢が重く見られる傾向にあり、手数は攻勢の一要素とされる。他に防御、リング・ゼネラルシップ(戦術、戦略や巧みな試合運び)の基準がある。

 ◆5月の王座決定戦VTR 村田がガードを固め、前に圧力をかけ、好機に右ストレートを狙った。対するエンダムは周回しながら手数を多く出す展開が初回から続く。4回には村田がカウンターの右ストレートでダウンを奪う。以降も展開は変わらず、村田のパンチにエンダムがぐらつく場面も多かったが、判定は1-2(117-110、111-116、112-115)。手数を優勢とした結果に終わると、国内外で判定への批判が噴出。WBAのメンドサ会長が誤審を認め、後にエンダム指示のジャッジ2人は6カ月の資格停止処分となった。