井上尚弥、区切りの世界戦「KOで終わらせたい」

前日計量を終え、対戦者のボワイヨ(右)とポーズを決める井上(撮影・たえ見朱実)

 ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(24=大橋)が不敗神話を継承する。今日30日、横浜文化体育館で同級6位ヨアン・ボワイヨ(29=フランス)と7度目の防衛戦に臨む。29日の前日計量では51・5キロでパスした挑戦者を横目に、規定体重の52・1キロでクリア。過去、同会場での日本人世界王者による防衛戦は5戦全勝中。心強いデータも後押しに、同級の集大成ファイトをKO防衛で飾るつもりだ。

 世界戦を控えた最後の「儀式」を終え、井上の表情には安堵(あんど)の笑みがこぼれた。約8キロという減量を成功させ、リミットで前日計量をパス。あとはリングに立ち、ゴングを待つだけとなった「モンスター」は、V7戦が節目の一戦になると予告した。

 「自分の中で、これでスーパーフライ級が最後と決めている。ラストの減量だったので踏ん張れたと思う。18年に階級を変えてスタートするためにも明日は1つの区切り。ここでつまずくわけにはいかない」

 井上が区切りの世界戦に臨む会場となった横浜文化体育館には心強いデータが残る。過去4人の世界王者が5度の防衛戦で全勝している。12年7月のWBC世界スーパーフライ級タイトル戦(佐藤洋太-ロペス)以来、約5年5カ月ぶりの世界戦。衝撃的だった9月の米デビューの反響も大きく、前売り券は完売し、当日券を残すのみ。「(完売は)うれしいです。いつも通り、井上尚弥らしい試合をみせるだけだと思います」。先輩世界王者たちの不敗神話を継承する覚悟だ。

 計量後は、おかゆとうどんで減量で疲労した肉体を回復。調整に専念するため、11月30日から別居していた夫人、長男と神奈川県内の自宅で過ごした。1カ月ぶりに家族と過ごした一晩。12月は前座で試合に臨む弟拓真と2人で生活していただけに「心もリラックスできて試合に臨むことができますね」と父親の顔ものぞかせた。

 世界戦のKO数を8まで伸ばした井上は、ボワイヨもKOで倒すと具志堅用高、山中慎介とともに9に並び、歴代2位となる。1位の内山高志の10に王手をかけることになる。「KOで終わらせたい」。18年のバンタム級転級、3階級制覇に弾みをつけるKO劇で17年を締めくくる。【藤中栄二】

 ◆横浜文化体育館での日本人王者の世界戦 95年1月、WBC世界スーパーフライ級王者川島郭志が12回判定でホセ・ルイス・ブエノを下し、V2防衛した世界戦を皮切りに過去4人の世界王者が5度の防衛戦に臨んで全勝中。74年、花形進がWBA世界フライ級王者チャチャイ(タイ)に6回KOで王座奪取したのが最初の世界戦で、日本人挑戦者の世界戦は過去6試合2勝4敗。日本人による世界戦は通算7勝4敗。

 ◆横浜文化体育館 1962年に開館した約4000人収容の屋内施設。64年東京五輪のバレーボール競技が開催。89年の横浜アリーナ完成までは神奈川県内の大規模施設として多くのプロスポーツ、国内外スターのライブ会場として利用。87年には4時間を超すBOφWYのライブも開かれた。現在ではプロレスの聖地の1つとしてノア、全日本、大日本、W-1などがビッグマッチを開催する。施設は横浜市が所有。老朽化が激しいため20年をめどに取り壊し、24年に横浜ユナイテッドアリーナが建設される予定。