オカダ・カズチカ矜持の34分26秒「王者とは?」

オカダ(右)は内藤にレインメーカーを決めマットにたたきつける(撮影・滝沢徹郎)

 IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(30)が自己新記録となる9度目の防衛に成功した。17年G1クライマックス覇者の挑戦者内藤哲也(35)に対し、3回目のレインメーカーでマットに沈め、34分26秒、片エビ固めで白星を挙げた。4年連続となる1・4東京ドームのメインを飾り、王者の矜持(きょうじ)を示した。またエース棚橋弘至(41)がマークした11度の防衛最多記録を更新する意欲を示した。

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 最後にオカダが立っていた。地鳴りのように響く3万4995人の大歓声に包まれ、マットに倒れた内藤を堂々と見つめた。4年連続で東京ドームのメインを務め、自己新の9度目防衛に成功。「オレは、オレのプロレスで全員を満足させてやる。感動の雨、幸せの雨を降らせてやりますよ。そして新日本プロレスに金の雨を降らせる」。IWGPベルトを満足げに見つめた。

 内藤のミサイルキック、フランケンシュタイナーなどを後頭部に食らい続けた。何とか窮地を乗り越え、レインメーカーを成功させたが、2カウントで返された。2回目は疲労でフォールできずじまい。30分過ぎ、挑戦者の必殺技デスティーノを切り返し、ドリル式ツームストンパイルドライバー。相手の脳天をマットに突き刺し、3回目のレインメーカーで仕留めた。粘りをみせたG1覇者を退けた。

 4年前。14年の東京ドーム大会は、自ら保持するIWGP王座戦がメインから外された。13年G1覇者の内藤と組まれた防衛戦はファン投票でセミファイナルに“降格”。中邑-棚橋のインターコンチネンタル王座戦にメインを譲った。勝利後、オカダはシャワーを浴びながら周囲の音を遮った。「歓声はあえて聞かなかった。口には出さなかったが悔しかった」。考えるようになった。「王者の仕事とは何か」と。

 昨年7月、ロサンゼルス郊外で新日本興行が行われ、この米遠征で意識させられたのは見られ方。「試合だけではない。会場入りする時に短パン、サンダルというのは王者として新日の価値を下げる」。日本語圏でないからこそ、芽生えた王者の自覚だった。「簡単になれないからこそスーパースター」。愛車フェラーリ488GTBを乗り回し、毎回違う服で会場入りするようになった。

 この日も「新たな刺激が欲しい」とセミショートパンツからパンタロンにコスチュームを変更。存在感、醸し出すムード…すべてにこだわった。「まだまだ、この戦いをやっていかなきゃいけない。それがオカダ・カズチカの使命なのかなと」。

 V9防衛は歴代3位の記録となる。「目指していたわけではないですが、V11もみえてきた。それはそれで楽しい」。棚橋の持つ最多防衛の記録更新を見据えた。王者の誇りを具現化するオカダに18年も死角はない。【藤中栄二】