スマイル・アサシン拳四朗「北斗の拳」ばり秘孔一撃

2回、ロペスからダウンを奪いガッツポーズをする拳四朗(撮影・横山健太)

<プロボクシング:WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ>◇25日◇東京・大田区総合体育館

 WBC世界ライトフライ級王者拳四朗(26=BMB)が、衝撃KOで3度目の防衛に成功した。昨年5月に王座を奪った同級1位ガニガン・ロペスを2回1分58秒、右ボディーストレートでマットに沈めた。みぞおち上の“秘孔(ひこう)”を突くアニメ「北斗の拳」ばりの一発で、連続防衛は日本ジム所属の現役世界王者で最長の「3」へ。テレビ生中継で笑顔を振りまいた“スマイル・アサシン(笑顔の殺し屋)”が存在感を見せつけた。

 あっという間の出来事だった。2回1分58秒。拳四朗の右ストレートが、ロペスのボディーにめり込んだ。体をくの字にして崩れる相手に、勝利を確信。両手を天に突き上げた。「勝者、ケンシロー」。リングアナのコールに合わせ、自分を狙うテレビカメラに顔を近づけ、笑顔でダブル・ピースを決めた。

 2度目の防衛戦は連打の「百烈拳」で決めたが、この日はワンパンチ。リングで「気持ち良すぎて、たまんないです~!」とはしゃいだ拳四朗本人が一番驚いていた。「ビックリした。ズドンって手応えはあったけど、まさか倒れるなんて…」。父の寺地永会長はしゃれっ気交じりに、こう言った。「秘孔を突いたんです。マネされたら困るから、細かい部分は内緒。難しくはない。要は打つ場所です」。

 「北斗の拳」のケンシロウばりの必殺拳だ。初防衛戦前の昨年9月、5日間のロス合宿に出向き、世界的トレーナーのルディ・エルナンデス氏に教わった。今回はルディ氏に来日してもらい、サポートを受けた。前日の夕食で「覚えてる?」と言われ、思い出したパンチだった。

 昨年5月に2-0判定で王座奪取したサウスポーとの再戦を完全決着に導いたのは、攻めだけではない。オーソドックスと違い、てこずった“距離感”を確立しようと3月上旬に10日間、4月下旬に7日間、2度のフィリピン合宿を行った。サウスポーばかりと約150ラウンドものスパーリング。「5センチ離れる。パンチが当たって、パンチをもらわない距離」をものにした。拳四朗は「1発もパンチもらいませんでした。こんなん初めてです」と誇らしげだ。

 世界戦4度目にして、初の生中継だった。関東地区はフジテレビのライブで、地元関西地区は系列のカンテレが「阪神-巨人戦」を中継したが、ダイジェストを放送された。「もちろん、意識しました」と入場からリングインまで笑顔を振りまき、秘孔を突いて勝負を決めた。まさに“スマイル・アサシン”が、一気に全国区にのし上がった。【加藤裕一】

 ◆拳四朗(けん・しろう)本名は寺地拳四朗で、漫画「北斗の拳」の主人公ケンシロウから命名。1992年(平4)1月6日、京都府城陽市生まれ。東城陽中3年時、高校のスポーツ推薦入学のためボクシングを始める。奈良朱雀高3年でインターハイ準優勝、関大4年で国体優勝。一時ボートレース選手を志すが、試験に2度失敗。14年8月プロデビュー。趣味は食べ、飲み歩きで将来の夢は「グルメリポーター」。好きな女性のタイプは女優桐谷美玲。家族は両親、兄。右ボクサーファイター。164センチ。