王者オメガ、全勝優勝掲げ「防衛戦と思って戦う」

6月9日、オカダ・カズチカを破ったケニー・オメガ

 新日本プロレスの真夏の祭典G1クライマックスは14日に開幕し、来月12日まで熱きバトルが繰り広げられる。第28代優勝者は誰か。今日13日、明日14日と昨年の優勝決定戦で争った2人、ケニー・オメガ(34)と内藤哲也の声をお届けする。まずはIWGPヘビー級王者として18年ぶり3人目の頂点を狙うオメガが登場。史上初の3年連続の優勝決定戦進出の偉業もかかる、新たな新日本の顔に聞いた。

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 王者として初防衛を果たした米サンフランシスコ大会(7日)から帰国する航空機、オメガはある映像を見た。機内エンターテインメントで選んだのは昨年のG1優勝決定戦、僅差で内藤に敗れた一戦だった。「もし去年勝っていたら、今年のモチベーションが難しかったかもしれない。今年が面白くなったね」。15日のBブロック初戦でいきなり激突することを「良いことだね。1年前との違いを見せたい」と歓迎する。

 濃密だったこの1年の集大成は先月。オカダの13度目の防衛を阻んでIWGPヘビー級王座をつかんだ。08年8月に来日して10年の悲願。日本語も滑らかな男は「新日本のブランドを広める使命がある。試合をしていない時間も大事だ」と広報活動にも精力的。その中で迎えるG1になる。

 「どの試合も100%でやらないといけない」と全勝優勝を掲げる。「もし負けたら、G1後に挑戦をアピールする口実を作ることになる。だから、1つ1つを防衛戦と思って戦う」。外国人選手として初優勝した16年、準優勝だった昨年は、作戦として全試合を100%で戦わないことで、頂点に近づいた。今年は立場が違う。米国の初防衛戦のダメージが抜けきらない中で開幕となるが、言い訳はできない。

 「オメガ」の名前の由来も、得意技「片翼の天使」「Vトリガー」の名称も、すべてゲームにちなむ。いまはまっているのは「マリオテニス」。17年のベストゲームは「バイオハザード」で、連夜部屋を消灯し、ろうそくをともして没頭したという意外な一面も、これまでの外国人選手でも随一と言える人気を支える。

 迫力ある空中戦や路上プロレスで磨いたハードコアの強さはもちろん魅力。「ベストバウトマシン」の異名通り、その腰にベルトを巻く夏だからこそ、好試合連発の期待は高まる。【阿部健吾】

 ◆ケニー・オメガ 1983年10月16日、カナダ生まれ。00年に地元ウィニペグのローカル団体でデビュー。米国インディー団体で活躍後、08年に初来日してDDTに参戦。飯伏幸太とのタッグで名をはせ、10年には新日本でIWGPタッグ王者。14年に新日本に移籍後、15年にIWGPジュニアヘビー級王者。ヘビー級に転向し、16年G1クライマックスで外国人選手として初制覇、17年にはIWGP USヘビー級王者となった。183センチ、92キロ。

 ◆G1クライマックス 91年に始まった新日本プロレスのシングルのリーグ戦。今年は、20選手が2つのブロックに分かれてリーグ戦を行い、各組1位同士が8月12日に東京・日本武道館で優勝決定戦を行う。リーグ戦は勝ち点制で、勝ちは2点、負けと無効試合は0点、引き分けは1点。最多優勝は蝶野正洋の5回。昨年は内藤哲也が2度目の優勝を飾った。