井上拓真 48戦無敗の男相手も「1発で取りたい」

ファイティングポーズを決めるWBC世界バンタム級井上拓真(撮影・中島郁夫)

ボクシングWBA世界バンタム級王者井上尚弥(25)の弟でWBC世界同級4位拓真(22=ともに大橋)が、12月30日に東京・大田区総合体育館で同級2位ペッチ・CPフレッシュマート(24=タイ)との同暫定王座決定戦に臨むことが7日、発表された。国内2組目となる兄弟王者を目指す。WBO世界スーパーフェザー級王者伊藤雅雪(27=伴流)の初防衛戦、WBC世界ライトフライ級王者拳四朗(26=BMB)の5度目の防衛戦とのトリプル世界戦となる。

2~3日前、井上拓に吉報が届いた。2年前、世界初挑戦の発表会見後のスパーリングで右拳を負傷。手の甲と手首をつなぐ関節を脱臼し、手術を受けた。1度は世界戦中止の憂き目を見た。「2年越しの世界戦。悔しい思いもあり、やっと決まったという思い。この2年でキャリアを積み、良いタイミング。必ず取れる自信がある」。待望のチャンスに声が弾んだ。

兄尚弥に続く世界王座奪取となれば、亀田3兄弟に続く国内2組目の兄弟王者だ。暫定ベルトを争うペッチは48勝無敗で、現在10連続KO勝ちの強敵。9センチも身長が高い172センチのサウスポーとなるが、井上拓は「1発で取りたい。今の自分は兄には、ほど遠く、下積み。ボクサーは世界王者になってからがスタート」と自らに重圧をかけた。

現在、兄は階級最強を決めるワールド・ボクシング・スーパーシリーズで準決勝に進出した。WBO、IBF両王者も参戦中で、優勝すれば3団体統一が可能。所属ジムの大橋会長から「拓真がWBC王者になれば兄弟で4団体制覇になる。大事な試合」とエールを送られると「まず世界王者になることが小さい頃からの夢。兄弟で4団体制覇はさらに大きな夢。夢をかなえるために必ず勝ちたい」と目を輝かせた。

9月に挑戦者決定戦を制した井上拓は当初、同級1位ウバリ(フランス)と同級3位ウォーレン(米国)による同王座決定戦の勝者に挑む通達を受けた。ところが同カードの交渉が長引き、WBCからペッチとの暫定王座決定戦が承認された。12月下旬をメドに1位-3位戦が開催されなければ、井上拓-ペッチ戦が正規王座決定戦に昇格する。「そうなればさらにモチベーションは上がる」。

心身ともに充実するモンスターの弟が辰吉、長谷川、山中らが巻いた伝統あるWBCバンタム級王座を狙う。【藤中栄二】

◆兄弟世界王者 アッテル兄弟(米国)は兄エイブが1901年にフェザー級、弟モンテが1909年にバンタム級で王座獲得し、史上初の兄弟王者に。以後、世界で30組の兄弟王者が誕生している。92年9月4日、ブレダル兄弟(デンマーク)は兄ジミーがWBOスーパーウエルター級、弟ジョニーもWBOスーパーフライ級で王座奪取し、史上初の兄弟同時王者となった。国内では亀田兄弟(興毅、大毅、和毅)が史上初の3兄弟王者、さらに3兄弟同時王者も達成してギネス登録済み。興毅、大毅で兄弟2階級制覇も成し遂げている。