堀口恭司「世界中のベルトを巻きたい」インタビュー

右拳を突き上げポーズを決める堀口(撮影・垰建太)

RIZIN、ベラトールの総合格闘技(MMA)2団体同時世界王者堀口恭司(28)が18日、RIZIN18大会(愛知・ドルフィンズアリーナ)で朝倉海戦に臨む。日本が生んだ世界屈指のMMAファイターに今の思いを聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

今年6月、堀口は世界の格闘技界に衝撃を与えた。米ニューヨーク・マディソンスクエアガーデンで行われたベラトール222大会で世界バンタム級王者ダリオン・コールドウェルに判定勝利。RIZIN世界バンタム級を保持しながら、2つ目のベルトを奪取した。2団体のベルトを同時に巻くのは総合格闘技界史上初めての快挙だった。

それから約2カ月。RIZIN参戦のため拠点米国から帰国した堀口に2冠王者となっての変化を尋ねた。すると、笑顔で「まったくないですね」と答えが返ってきた。「ただ単に戦って勝った喜びはありますが、ついてきたのがベルトというだけであって。2冠王者になったから、こうしなきゃ、ああしなきゃ、というのはないです」。周囲の反応も「SNSが苦手なのであんまり分かんない(笑い)」。ベラトール後も休みなく練習し、レベルアップに努めてきた。

注目の中で今回戦うのは25歳の朝倉海。RIZIN4連勝中で、クレバーな戦いができる強敵だ。堀口は「打撃主体の激しい試合をする選手なので、自分とかみあって打撃の応戦になると思う」と展開を予測。その上で「やることはやっているので自信はある。朝倉選手の対策もだし、自分のスキルアップも。見てのお楽しみです」と不敵に勝利を予告した。

日本での格闘技の盛り上がりを感じつつも、堀口は「まだまだです」と話す。目指すのは、自分が少年時代に熱狂した格闘技ブームの再来だ。「空手をやっていた小学校からK-1を見ていたし、高校生のときに夢中になったのはPRIDE。それを見て、おれもこうなりたい、強くなりたい、っていう夢を持たせてもらった。自分も、少しでも多くの子供たちに見せて、夢を持ってもらいたい」。

子供たちに格闘技を薦めるのは、それが心の育成にも役立つと信じるからだ。「今はバーンとやる(手をあげる)と、すぐ虐待だ、とかあるじゃないですか。でも、そういうので人の痛みが分からなくなると思うんですよ。だから格闘技を通じて人の痛みをわかる大人になってほしいなと思います」と熱く語った。

もっと格闘技を盛り上げるために「世界中のベルトを巻きたい」とシンプルで壮大な夢を掲げる。権利などの問題で、団体の垣根を越えたマッチメークは難しい状況にあるが、「そういう権利とかをぶっとばしてやりたい。団体の壁も壊していきたい」。今は「誰でもかかってこい」と相手を問わない姿勢だが、タイミングとチャンスがあれば、現UFCバンタム級王者ヘンリー・セフード、元UFC王者で現在ONEチャンピオンシップで活躍するデメトリアス・ジョンソンらとも「いつか、したいっす」。団体を超えた真の世界一を目指す。

趣味の釣りについても聞いてみた。「なんで好きかって、無になれる。そして格闘技に通じるところもある。自分がやっているのはルアー(疑似餌を使った釣り)。魚って、いる場所がだいたい決まってるんですよ。水の流れのここらへんにいるだろうなと考えて、その答えが返ってくる。釣れたときに、『あぁ、やっぱり』といううれしさがある。それが格闘技に似ている。このパンチが来たから避けてこう出そう、とか。このパンチ当たらない、じゃこれ当てよう、とか」。大好きな釣りで培った勘も頼りに、今回もしたたかに勝利をつり上げる。