格闘家に転向「年俸120円Jリーガー」が成功祈願

亀戸香取神社で必勝祈願した安彦考真(撮影・大野祥一)

「年俸120円Jリーガー」としてJ3のYSCC横浜などでプレーし、昨季限りで現役引退して格闘家へ転向した安彦考真(42)が12日、新年初練習と成功祈願を行った。

安彦は昨年12月のJ3最終節後のセレモニーで競技経験のない格闘家への転向を発表。格闘技イベント「RIZIN」出場を目標に掲げていた。この日は午前中に地元の相模原市内の公園でトレーナーと共に新年初練習を実施。フィジカルトレーニングやパンチ練習などで約1時間半、汗を流した。

午後は「スポーツ振興の神」として知られる都内の亀戸香取神社(江東区)を訪問。レスリングの吉田沙保里や競泳の池江璃花子ら多くのオリンピアンも必勝祈願に訪れたことのある聖地で、新たな挑戦の成功を祈願した。Jリーガー時代はチームメートらと共に必勝祈願に訪れていたが、今回は1人に。安彦は「過酷な1年が始まるぞという気持ちになって、身が引き締まった。格闘家としてのいいスタートが切れたのかなと思います」と話した。

年末年始は昨年12月31日から今月9日まで知り合いのいる北海道砂川市で過ごした。自身が出場を目指す大みそかのRIZINも見たといい「選手が花道を歩く姿には感動した。自分もあの道を仲間と歩いて、リングに立ちたいと思った」とあらためて奮い立った。「僕は閉塞(へいそく)感や停滞感のある今の社会にパンチを与えようとしている。今の世の中にこういう挑戦者が必要だという思いで取り組んで、リングに安彦が必要だと思ってもらえたら。そこに立っているイメージをし続けることが大事だと思います」と意気込んだ。

北海道滞在中には知人から依頼を受けて札幌市内の中の島中学校で講演会も行った。スポーツに励む生徒らに自身の経験などを語ったといい、生徒からは「なぜそんなに挑戦できるのか」など素朴な疑問を多く受けた。安彦は「『心に響いた』という声ももらえた。生の声が届けられて良かったと思う」と振り返った。

今後については「何が見えているかというと何も見えてはいない」と明るく口にした。「Jリーガーを目指した時もそうだった」と付け加え「リングの上に立つというやることは決まっている。そのために何をするのかはこれから。歩みながらいろんな人を巻き込んで『あいつは何かやるな』と世の中の人に思ってもらいたい」。引き続きフィジカルトレーニングなどを続けながら、トレーナーらと相談しながら所属ジムなどを探っていくという。

安彦は39歳の時に、20代の頃に1度は諦めたJリーガーへの再挑戦を決意し、18年に練習生を経てJ2水戸とプロ契約。19年からYS横浜へ移籍し、同年の開幕戦で41歳1カ月9日で途中出場してプロ初出場を飾り、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。年俸120円の“ほぼ0円”契約も話題となる中、昨季開幕前に今季限りでの現役引退を表明。次なるステップとして格闘家転向を掲げていた。【松尾幸之介】