WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が、2年1カ月ぶりの国内凱旋(がいせん)マッチを勝利で飾った。
【井上尚弥】8回TKO勝ち 難敵ディパエンに苦しむも防衛/世界戦ライブ詳細>
IBF世界同級5位アラン・ディパエン(30=タイ)との防衛戦に臨み8回2分34秒TKO勝ち。WBA6度目、IBF4度目の防衛に成功した。19年11月、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)のバンタム級決勝、世界5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)との激闘を制して以来の国内世界戦だった。来春の3団体王座統一戦に向け、大きく前進した。
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粘るタイ人挑戦者を仕留め切った。井上が次々と強打をねじ込み、4回以降は流血と腫れで相手の顔は赤く染まった。懸命に耐える相手を逃さない。8回、左フックでダウンを奪取。さらに左フック追撃で勝った。「予想を超える試合」をと宣言し、リングに立っただけに「戦前の予想、期待をはるかに下回る試合をしてしまい、申し訳ございません」と自虐的な発言で会場の笑いを誘った。
打っても打っても倒れない。我慢強い挑戦者に「やっているこっちがメンタルをやられそう、本当にタフだった」と敬意を表した。さらに「楽しめましたし、良い経験ができた」と2年1カ月ぶりに国内世界戦を、有観客で実現できた喜びを素直に表現した。
新型コロナウイルス対策で試合1カ月前から練習中のジムは「貸し切り」に変更された。井上は周囲から耳に入る「ディパエンは格下」との声を遮断。父真吾トレーナーもピリピリムードを漂わせた。「集中してピリッとしている方がいいものが出る。余裕を持たせる空気はいらない」と笑顔を消した。スパーリングで余裕をみせれば父から「次の試合のために締めろ」とのゲキが飛んだ。井上自ら「一切、油断はない」と言える環境だった。
さらに同時期から元世界3階級制覇王者、八重樫東トレーナーによるコンディショニング練習を新たに導入した。同トレーナーに「伸びしろを感じてもらえたら」と提示されたメニューを、しっかり消化した。大橋会長が「八重樫トレ初日の尚弥は、スパーリング出来ない状態だった」というほど過酷な内容だった。父の緊張感と八重樫トレが、大きな刺激になった。
来年4月中旬に、首都圏で対抗王者との3団体統一戦が組まれる予定だ。井上は「会長にビッグマッチを組んでいただくつもり。燃えるような試合を」と気合を入れた。真吾氏は「次の課題が見つかって余白がある。まだ伸びる」と言った。22年も井上は強くなる。
【藤中栄二】
◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマチュア選手の父真吾さんの影響で小学1年で競技を開始。相模原青陵高時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。国内最速(当時)6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、国内最速(当時)の16戦目で3階級制覇。19年5月にWBA、IBF世界バンタム級王者に。同年11月、WBSSバンタム級優勝。家族は夫人と1男2女。身長164・5センチの右ボクサーファイター。
◆世界主要4団体統一王者 過去7人誕生している。世界主要4団体となって以降、04年にバーナード・ホプキンズ(ミドル級)、05年にジャーメイン・テイラー(ミドル級)、17年にテレンス・クロフォード(スーパーライト級=すべて米国)、18年にオレクサンドル・ウシク(クルーザー級=ウクライナ)、20年にテオフィモ・ロペス(ライト級=米国)、21年5月にジョシュ・テイラー(スーパーライト級=英国)が達成。同11月には世界的人気スターのサウル・アルバレス(スーパーミドル級=メキシコ)も4団体統一を果たした。