大工ボクサー福永亮次、境遇など共通点が多いパッキャオと同じ道切り開くか

計量をパスして記念撮影を行うWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(左)と挑戦者の福永亮次(撮影・中島郁夫)

ボクシングWBO世界スーパーフライ級6位福永亮次(35=角海老宝石)が31日、東京・大田区総合体育館で同級王者井岡一翔(32=志成)に挑戦する。

新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」の影響で新規外国人の入国が原則禁止となり、井岡とIBF世界同級王者ジェルウィン・アンカハス(29=フィリピン)との統一戦は中止に。アンカハスの「代役」として福永に白羽の矢が立った。35歳の遅咲きが世界初挑戦のチャンスをつかんだ。

福永の愛称は「リトル・パッキャオ」。世界的スターで今秋に現役引退を表明した元世界6階級制覇王者マニー・パッキャオ(43=フィリピン)と似た風貌、ほぼ同身長のサウスポースタイルということから所属ジムの浅野完幸マネジャーに命名された。しかし醸し出す雰囲気だけでなく、境遇も共通点が多い。貧しい家計を助けるために、建設作業員として働いていたこともあるパッキャオに対し、福永も15歳から現在まで型枠大工として建設現場で働いている。

そしてパッキャオ本人は「代役」での勝利が1試合で数億円を稼ぐスター街道を突き進む契機となった。01年6月、IBF世界スーパーバンタム級王者レーロホノロ・レドワバ(南アフリカ)に挑戦予定だった選手2人が故障で欠場した際、フレディ・ローチ・トレーナーに代役として急きょ抜てきされて王座挑戦。計3度のダウンを奪い、6回TKO勝利を収めている。その後、米国を拠点として世界6階級制覇や1試合で数十億円を稼ぐボクサーとして世界的人気を博することになった。

世界初挑戦となる福永も、パッキャオと似た境遇であることも分かっている。井岡戦が正式発表されたのは12月16日。22年1月15日に予定されていたWBOアジア・パシフィック、日本王座の防衛戦を繰り上げての急ピッチ調整となるものの「ボクもめっちゃ持っているなと。運だけは本当にある」とプラス思考でとらえている。

井岡が来春にもアンカハスとの王座統一戦を再セットすることで合意済みと知ると、福永は劣勢という戦前予想を覆す自信を示した。「向こうは次戦の調整試合ぐらいにしか思っていないだろうけれど。自分が全部、取ってやろうと思っている。挑戦者らしくいって最後に僕の手があがっていると思います」と不敵な笑みを浮かべた。

パッキャオと同じく左強打を持ち味とする福永は15勝のうち14KOというパンチ力が魅力。リトル・パッキャオが、その両拳で本物と同じサクセスロードを切り開くことができるのか。この世界挑戦のため、12月28日には日本、WBOアジア・パシフィック両王座も返上している。25歳でボクシングを始めた遅咲きのたたき上げボクサーが、世界王者の夢に向け、自身初の大みそかリングに上がる。