安彦考真「44歳で格闘技のプロリングに立つより難しいことはない」不死身の根性で相内誠KO

安彦孝真対相内誠 1回、相内(左)にTKO勝利し雄たけびを上げる安彦(撮影・横山健太)

<RISE FIGHT CLUB>◇16日◇新宿FACE

元年俸120円Jリーガーで20年末から格闘家に転向した安彦考真(44=Executive Fight 武士道)がプロデビュー戦に臨み、1R1分51秒でKO勝ちをおさめた。

相手は元西武投手の相内誠(27=K26)で66キロ契約の3分3ラウンドで対戦。17歳年下、身長も10センチ高い相手にもひるまずに第1ラウンドから攻め立てた。1分すぎに右ストレートを完全に顔にヒットさせてダウンを奪った。直後に2度目のダウンを奪って勝利を決めると、飛び上がって絶叫。指導を受けている元K-1王者の小比類巻貴之氏(44)と熱い抱擁を交わした。

おじさんの意地をみせた。自身はサッカー、相内は野球出身。「代理戦争みたいなもの」と対戦を喜んだが、相内には「正直『サッカーでしょ?』っていう感じなんでサクッとやっつけちゃう」「練習しなくても大丈夫」などと何度も挑発された。前日計量では漫画ドラゴンボールに登場する弁髪風の長い三つ編み姿が特徴的な殺し屋、桃白白(タオパイパイ)に例えられ「明日は隣のタオパイパイを倒そうかなと思います。仙豆(漫画内で出る体力が回復する豆)は多分使わなくても勝てるかなと思っています。うす」と笑いものにされた。応戦はしなかったが、「絶対に倒す。負けるわけにはいかない」。入場曲はアマチュア大会でも使っていたサンボマスターの「できっこないを やらなくちゃ」。闘志をたぎらせて臨んだ舞台だった。

覚悟は日々の練習にも表れていた。約1年前から元K-1王者の小比類巻貴之氏(44)のもとで指導を受けるようになり、同氏が運営する東京・恵比寿の小比類巻道場で汗を流す日々。昨秋からは同道場でトレーニングを積むRISEのプロ選手、京介(24=TOP DIAMOND)とのスパーリングなどで腕を磨いた。短い時間で成果をあげる効率性の高いトレーニングがトレンドの中で、1日3時間の練習を地道に続けた。

始めは京介のパンチで失神、強烈なボディに身をゆがめることもしばしば。それでも毎日通い続け、ミット打ち、サンドバッグ、スパーリングをこなし、時には恵比寿の路上をひたすらダッシュすることもあった。徹底的に鍛え抜き、44歳にして体脂肪率は7%。京介も「この人は本当に本気なんだなと。どんどん強くなっていってるのも肌で感じていましたし、生き方的な部分で学ばせてもらっていることは多いです」と語った。

誰もが認める“挑戦モンスター”は歩みを止めない。これまでは神奈川・相模原市内にある実家から片道約1時間半かけて都内に通う日々を過ごしていたが、ついに引っ越しを決断。早ければ今月中にも渋谷区内にある家賃約20万円のデザイナーズマンションへと居を移す。資金源はスポンサー収入やオンラインサロンの収益など限られており、決して安泰ではない。それでも「今は時間の方が大事なので。自分へのプレッシャーです。40歳でJリーガーなるより、44歳で格闘技のプロリングに立つより難しいことはないんじゃないかな。大丈夫です」と不死身の根性を口にした。

格闘家として初めてつかむファイトマネーも国際医療支援団体などに寄付する意向を示している。「残高を気にしない人間でいたいというのがモットーなので。ファイトマネーでお金もらおうと思うと、僕の中での目的と一致しない」とブレない姿勢を貫く。

20年12月。サッカー選手としての現役引退セレモニーでぶち上げたのは「大みそかのRIZIN出場」。「できっこない」「無理だよ」と言われるほど燃える。初めて立ったプロのリングで存在感を示し、安彦はこれからも挑戦を続ける。【松尾幸之介】