YUGO代表、ブレイキングダウンが「バズる」理由は「人の行動原理に基づいているから」

写真に納まるBreakingDown代表のYUGO氏(撮影・勝部晃多)

1分1ラウンドで最強を決める「BreakingDown(ブレイキングダウン=BD)」の6.5大会が4日、都内某所で開催される。これまで、プロ格闘家にとどまらず、人気ユーチューバーやタレントなど多数の著名人が出場してきたこの大会。異色の格闘技イベントとして一大ムーブメントを起こし、回を追うごとに規模を拡大し続けている。同イベントが「バズる」魅力とは。代表のYUGO氏に聞いた。【取材・構成=勝部晃多】

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-大ヒットの理由をどのように分析しているか

YUGO 人の行動原理に基づいているからだと思う。殴り合いやののしりあい、これは好きとか嫌いとかに関係なく、人は見てしまう。「この人たちは何でけんかをしているんだろう」「どんな人なんだろう」と知りたくなる。BDは人間賛歌をテーマにしているが、人が人に興味を持つことを原動力としてパッケージにしているので、格闘技に興味のなかった人も、いやが応でも見てしまう。

-なぜ1分1ラウンドの大会をやろうと思ったのか

YUGO きっかけは(朝倉)未来さんがユーチューブで「1分1ラウンドの戦いが面白そう」と話していたのを見たこと。「確かに面白そうだ」と直感し、まったく面識がなかったが「一緒にやりたい」とプレゼンでアタックした。そこから2週間くらいでお金を出し合って会社をたてて、1カ月後には記者会見を開いた。

-どのあたりにピンときたのか

YUGO 昔からプロレスや格闘技を見て育ってきて、僕自身もプロの格闘家として活動していた時期があった。そこで、プロレスの衰退から総合格闘技ブームといった日本における格闘技界の流れを見てきて、課題を感じる部分があった。それは、格闘技がスポーツとして確立されていけばいくほど、「幻想」が生まれにくくなってきたということ。例えば中国4000年の歴史の武術を体得したおじいちゃんが出てきたとして、「何か起こるんじゃないか」と思わされた時代もあった。でも、今はそういう幻想を感じるのが難しい。そこで、1分1ラウンドと聞いた時に、幻想が生まれるのではないか、取り戻せるのではないかと思った。1分という枠組みの中であれば、一般人がプロに勝てるかもしれない。なにか既定路線じゃないことが生まれるかもしれない。実際にやってみると、素人がプロを食うこともあり、確信に変わった。

-未経験者や著名人も多数出場。格闘技ではないという批判もある

YUGO 格闘技だろうが格闘技じゃなかろうが、自由に議論しておいてくれればいいと思っている。近しい話で言えば、ガンダム。新しいシリーズが出るたびに「こんなのガンダムじゃない」という人もいる。アイドルはアーティストなのかとか、これはロックなのかロックじゃないのかというのも同じ。答えはない。そういった議論と一緒なので、自由にやっておいてくれればいい。

-けんかの代名詞になってもいいのか

YUGO 人が殴り合うとか、人同士が感情をぶつけ合わせること、それは、きれいとか汚いとか、いいとか悪いとかじゃなくて、人間の根源的な部分。誰もが経験があることだと思うし、そこを見て見ぬふりはできない。BDのいいところは、けんかした後にみんなが仲良くなる。きっかけはけんかかもしれないが、それによって人が変わっていく。そんな人間ストーリーがある。BDは人間賛歌。楽しみ方は人それぞれ。「けんかを助長している」と捉えている人には、そんな一面にも目を向けてほしい。

-回を追うごとに規模が拡大していく

YUGO PPV(ペイ・パー・ビュー)購入者の推移は当然、毎回右肩上がり。6(大会)は5(大会)の3倍くらい。100万円の席も売り出した。次の会場はもう少し大きな会場を予定。とにかくトライエラーを繰り返していけるのが強み。

-最終的な目標は

YUGO 1分1ラウンドが世界基準になれば面白い。日本では形になってきた。けんかのニュースやもめている動画があがると「BDみたいだ」とか、だんだん名詞化してきている。今後はスケールアップして、各国々の反響に合わせてやっていきたい。1分1ラウンドといえばBD。世界からもそう思ってもらえるように、メイドインジャパンとして発信を続けていく。

【BreakingDownアラカルト】

◆旗揚げ 格闘技や格闘家のありきたりなイメージを“壊し続ける”という理念で、昨年7月に第1回大会を開催。

◆スペシャルアドバイザー 人気総合格闘家の朝倉未来(30=トライフォース赤坂)、海(29=同)兄弟が務める。未来はプロデューサーとして試合のマッチメーク、海は大会舞台裏の発信などを担当する。

◆大会概要 1分1ラウンドの総合格闘技を軸に、キックボクシングルールや女子、2対2の試合などバリエーション豊富。放送は、番組ごとの有料視聴となるPPV(ペイ・パー・ビュー)。スピンオフ大会の「.5」大会はユーチューブで無料配信する。

◆オーディション 4大会から実施。本気で人生を変えたいという選手たちが登場し、自己アピールして本戦出場を目指す。11月の6大会の応募総数は過去最高の約2000人。オーディションの様子は朝倉未来のユーチューブチャンネルで公開され、関連動画の総視聴回数は5000万回超を達成。

◆記録 8月の5.5大会は全試合を生配信したユーチューブで同時接続者数42万人を記録。歴代トップ10にランクインした。

◆話題 これまで、大相撲の先代時津風親方(元前頭時津海)やユーチューバーのシバター、元タレントの坂口杏里さんらが出場して話題に。オーディションや前日会見では、女子の乱闘や飲酒暴走など騒動も。11月の6大会の会見では、ユーチューバー久保田覚が対戦相手をパイプ椅子で殴打して流血させ、丸刈りで謝罪した。