“偽装”
プロボクシングWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(28=米国)が、わずか“3分間”の“偽装”公開練習で煙幕を張った。25日に東京・有明アリーナで同級1位井上尚弥(30=大橋)の挑戦を受ける無敗の2冠王者は14日、横浜市内の大橋ジムで公開練習に臨んだ。
練習を始めたフルトンは、バンデージも巻かず、グローブも付けずにリングに入ると、右のオーソドックススタイルなのに、終始サウスポーで軽いシャドーボクシングを開始。それもわずか1分弱で切り上げると、リングの横にあったパンチングボールとサンドバックを遊び半分にたたいただけで、足早にジムを後にした。練習時間は正味3分弱。「流すにしても、ここまでとは」。偵察に訪れた井上のトレーナーを務める父真吾さんも苦笑いするしかなかった。
関係者によると、別のジムで1時間ほどしっかりと汗を流した後、公開練習が予定されている大橋ジムに移動したという。つまり、最初からここで練習するつもりはなかったようだ。上半身には体形を隠すようにダボッとした大きめのシャツを着用。ボクシングのスタイルやパンチ、体形に至るまで徹底して“公開”しなかった。
練習直前の約10分間の会見でウエートを聞かれると、口に人さし指を添えて無言。日本での調整については「練習して、食べて、休んで、また練習して」と具体的なことは口にせず、井上対策についても「特別なことはしていない」と多くを語らなかった。
表情こそ終始にこやかだったが、1階級下の4団体統一王者の井上を警戒するあまり、この一戦にナーバスになっていることの裏返しだろう。井上の印象を聞かれると「グレートファイター。(パンチを打つ)タイミングがいい」と称賛したが「頭を使って賢く戦う。自信がなければ日本にはきていない」とも。
世界が注目する無敗の2冠王者と、4階級制覇を目指す1階級下の元4団体統一王者の“世紀の一戦”は、すでに“神経戦”という駆け引きが始まっている。【首藤正徳】