元WBC世界王者の矢吹正道、ボクサー生命かけた復帰戦へ けがと向き合い、スタイルも変更

練習に臨む元世界王者の矢吹(左)(LUSH緑ジム提供)

元WBC世界ライトフライ級王者の矢吹正道(31=LUSH緑)が19日、ボクサー生命をかけた復帰戦への思いを語った。

矢吹は3月16日にポートメッセ名古屋で契約体重50・3キロの10回戦で元WBO世界ライトフライ級15位ケビン・ビバス(28=ニカラグア)と対戦する。

矢吹にとって、昨年1月28日にIBF世界ライトフライ級挑戦者決定戦でロナルド・チャコン(ベネズエラ)に11回TKO勝ちして以来の試合。世界へ再挑戦の道筋を描いた直後、5月の練習中に左アキレス腱(けん)を断裂した。一時は引退も真剣に考えた末の現役続行。再び世界に挑む夢をあきらめず、その可能性を現実にできるのか、自身を試す勝負でもある。

「気持ち的には1年2カ月ぶりの実戦になるんでね。試合ができることの喜びと同時にけがをしないことを一番に考える。もちろん不安はあります」

「ブチッ」というイヤな音を聞いたのは約10カ月前、スパーリングをやっている最中だった。予定されていた8月の試合はキャンセル。手にした世界王者への挑戦権も自動消滅した。目標を失い、モチベーションも失いかけた。そこから何とか気持ちを奮い立たせたが、これまでとは違う現実を受け入れた。

「スパーリングをしていても感じますが、前みたいに足を使えない。相手を追ったり、相手の攻撃をよける時に感じる。また痛めるんじゃないかという恐怖は常にありますね」

人工靱帯(じんたい)でつなぐ手術を受けた。その際、執刀した医師に言われた。「骨は(けがする前より)100%以上になる可能性もあるが、靱帯は100にならない。しっかり動けるようになるのも1年以上かかる」。心が折れかけたが、最終的には戦う意欲が上回ったという。

けがの再発を恐れる中でボクシングスタイルも変える。「足が使えないからスタイルも変わっていく。足を止めて打ち合うことになると思う。ただ(相手のパンチは)もらわない。ガードは大事だが、被弾するとダメージは重なる。上体を動かしてもらわずに打つスタイルを練習してます」。

いわゆるファイタースタイルへ。変身した形を試すのが、今回の戦いとなる。「しっかりいい内容で勝って、先につなげたい」。ライトフライ級はかなり減量が厳しくなり、1階級上げてのフライ級も見据える。その先を描くのも、3月の試合に勝利してから。負ければ閉ざされる厳しい道に、矢吹が1年以上ぶりに踏み出す。【実藤健一】