【SSPW】レジェンド王者間下隼人がアレクサンダー大塚戦へ「マスクかぶってなくても僕も虎」

レジェンド王者・間下隼人がアレクサンダー大塚を相手に防衛戦を行う(画像提供SSPW)

初代タイガーマスクの佐山サトルが率いるストロングスタイルプロレス(SSPW)は20日までに、21日の後楽園ホール大会でレジェンド王座防衛戦を行う王者・間下隼人(37=SSPW)のインタビューを公開した。

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第17代王者・間下隼人(SSPW)VS挑戦者・アレクサンダー大塚(AODC)

 

-まず間下選手にとって挑戦者のアレクサンダー大塚選手はどのような存在か

間下 実は、僕がプロレスラーとしての道を歩みだしてから本当にすぐにお会いしてる方なんです。自分は06年9月15日に入門してるんですけど、9月20日にSSPWの後楽園ホールがあって。そのときにアレクさんが出てらっしゃって、佐々木日田丸さん……当時は佐々木恭介さんとの試合でしたね。あいさつの仕方も分からない状態で、続くか続かないかも分からない練習生だった自分にあいさつを返してくれて、「佐山先生の弟子としてやっていくのは大変だと思いますが、頑張ってくださいね」って言ってくれたのをすごく覚えてるんです。

-そんなアレク選手と王座をかけて闘う

間下 ホントそうですよ。あのときは「本物のアレクだ!」って心の中ではしゃいでましたし(笑い)。アレクさんはプロレスラーとして総合格闘技界に先陣を切って出て行って、PRIDEに出たときもマルコ・ファスを倒して結果を出した方じゃないですか。僕は高田延彦戦がすごく好きで、結果としては負けでしたけど、プロレスラーとしての意地が見えた試合だったことを鮮明に覚えています。そういう人と巡り巡って僕がチャンピオンとして闘う日が来るのは感慨深いです。定期的にアレクさんと闘わせていただいているんですけど、1回も勝ててないんですよね。シングルは今回が初めてですけど、しっかり僕が超えていかないといけないと思います。

-今年2月の川崎大会では、アレク選手にジャーマン・スープレックスを食らって敗れた

間下 僕、シュレックさんにもジャーマンで負けてるんですよ。ジャーマンに弱いのかな? シュレックさんとは違うジャーマンって感じがしましたね。アマレスのジャーマンと、柔術のジャーマンって違うんだろうな。こういう風に(※上に放り上げるように)投げられたんでキツかったっすね。その前のネックロックで意識無くなりそうなくらいにキツかったってのもあるんで、アレにも気をつけたいですね。ジャーマンの他にも、ドラゴン・スープレックスとかタイガー・スープレックスも使われていた記憶があるんですけど、タイガー・スープレックスだけは食らう訳にはいかないですからね。

-アレク選手も、25周年時の船木誠勝選手との初シングル(20年12月17日)で試合序盤に蹴りを受けて左腕を骨折しながらも闘い抜いた

間下 アレはヤバかったですね。あの瞬間、音が違ったんで「あっ、折れた」ってみんな同時に察したのを覚えてます。僕も1年前に真霜拳號さんとやってベルト獲(と)ったとき(23年2月22日)に試合中に真霜さんの蹴りを受けた親指が折れちゃって。そのままずっと試合を続けているんで実は今も治ってないんですけど…。

-今も右手親指をテーピングでガチガチに固めているがそのせい?

間下 あぁ、これは今朝脱臼しちゃっただけです。-今朝脱臼!?

間下 ちゃんと治さないまま、っていうか欠場とかもせず折れたままずっと続けてるんで。試合の度に亜脱臼を繰り返してるんで、すぐ取れちゃうんですよね。

-ちなみに、けがの詳細は?

間下 右母指CM関節内粉砕骨折、中指骨骨折、右母指靱帯(じんたい)全断裂、右母指脱臼って、一発で4つやっちゃって。試合のときは「あっ、脱臼したな」くらいの感覚だったんですけど、終わったあとに近くの病院行ったら「ウチじゃ無理なんで大きい病院行ってください」って言われて。たまたま最寄りの大きな病院に日本に何人かしかいない指の専門医の先生がいたんです。そしたら「即手術です。引退も考えてください」って言われて。でも、僕の地元の福岡凱旋(がいせん)大会(23年3月18日)が決まってたんで「それが終わるまでは手術できないです」って言ったら、「なに言ってんだコイツ」みたいな顔されましたね(笑い)。それで、指グッチャグチャのまま福岡でも勝って、帰って手術して、リハビリもそこそこに練習を再開してって感じでした。

-完治のめどは?

間下 無いですね。一生このままだと思います。指の中のボルトが折れて5ミリくらいチタンが残っちゃってるんですよね。骨の中に埋まっちゃってるんで、取るなら骨ごと抜き取らないといけないみたいで。そんな手術したら1年や2年じゃ戻れないんで無理やり続けてて。

-最初に見た“佐山先生の弟子”としての地獄はどのようなものだったか

間下 入って1週間くらいだったかな? 先生がお出かけになる前に「キミ、スクワットしてて」って仰って。いつまでとか、何回とかも分からなかったんで8時間くらいスクワットしてたんです。意識ももうろうとしてたんですけど、回数だけは数えようと思って。1万713回です。それはまだ覚えてます。先生が道場に帰られて「キミ、何してんの?」って言われるんで「スクワットしてました」って答えたら「バカかお前はっ!」って怒鳴られて……。もう歩けなくて。っていうか本当に立つこともできなくなっちゃったんで、先生がタクシー代を出してくれて寮まで帰りました。あとで見たら道場の畳がちょっと沈んでて、血と汗のシミができてて…。言ってて思ったんすけど、これ劇画っすね(笑い)。

-入門テストは普通だった?

間下 面接のときにドアをノックして開けたら、まず目の前に金髪で入れ墨だらけの折原さん(折原昌夫)がいるんですね。ドアが閉まって密室になったときに「あっ、俺殺されちゃうんだな」って思いました。そのあと折原さんが先生を呼んだら、はかまを履いて日本刀を持った先生が出てきて。そこでまた「あっ、俺殺されちゃうんだな」って思って。そのあと、折原さんに気を失うまでスパーリングでボコボコにされて。先生が気を失った僕の顔にペットボトルから水をかけて、僕が起きたら「はい、合格」って。(今では何が起きても)普通っていうか、「まあ、そんくらいは」って思っちゃうんですよね、今の僕から見たら。

-最初の頃はどのような練習を?

間下 プロレスの技術的な練習よりも格闘技寄りというか。ただただひたすらに強さを追究する練習だったんです。俗に言う“ガチンコ”ですね。僕は格闘技経験なんて無いのに、いきなりスーパー・タイガーとヘッドガードもマウスピースも付けずに打撃のスパーリングをして。勝てるわけ無いじゃないですか!(笑い)。勝つどころか、一発もかすりもしないし、蹴られまくるわ殴られまくるわ、歯は折れるわ顔面は血まみれになるわ…。今考えると本当に恐ろしい練習でした。すんごいキツかったです。そのあとに、折原さんとスクワットを3000回やるっていう。でも、なんも知らない状態で入ったんで、それが当たり前だと思ってたんですよ。

-間下選手はここ数年で身体も大きくなり、レジェンド王座戴冠も果たした。この飛躍にはどのような理由が?

間下 3年くらい前ですかね。先生が「なんでプロレスの練習しないの?」っておっしゃったんですよ。僕ら、ガチンコの練習しかしてなかったんで。トレーニングに関しても「なんでウエイトしないの?」って。まあ、結果的に先生が高く評価なさっている日高郁人コーチが就任なさって、プロレスの練習とウエートトレーニングが解禁されて。初めて他団体の選手がしてきたような練習を経験して「あっ初めてプロレスを習ってるな」って感覚になりましたね(笑い)。

-ジャガー横田選手も女子マッチのプロデューサー&相談役として参画した。ジャガー選手からの指導は?

間下 ジャガーさんにも本当に良くしてもらってて。初対面で「アンタは身体も大きいんだから遠慮しないでちゃんと行ったほうが良い」「遠慮してる内はアンタは今より上に行けない。いいもん持ってるんだから自信を持て」ってご指導くださって。周りがスゴい人ばっかりだったんで、僕は自信っていうものをかけらも持てずにずっとやってたんですけど、あのジャガー横田が「自信持て」って言うならちょっと持ってみようかって思えて。

-長い長い下積みを経て、37歳でようやくプロレスラーとして完成してきた

間下 僕も年齢を重ねてきましたけど、上がスゴすぎるんですよ。まだ若虎としては若頭補佐的な役割というか(笑い)。SSPWを見渡すと、将軍岡本選手ですら僕より上ですし、関本大介さんも上、シュレックさんも50ちょっと、アレクさんも52歳。闘う人が一回りは上なんです。僕が上の人たちを超えていかないと、結局この新調されたベルトの価値も上がっていかないんです。おこがましいかもしれないですけど、僕が団体の時計の針を進めたと思ってるんです。

-そのために、アレク選手を超えなければ

間下 ちょっと言い方は失礼かもしれないですけど、このカードが決まったときに周りから「なんで今アレクなの?」って言われたんです。でも多分、今なんです。今しかないんです。僕が遅かったとか、アレクさんが早かったとかじゃなくて、このタイミングでアレクサンダー大塚と闘えるというのは僕にとってプロレスだけじゃなくて人生にとってプラスになるという確信があるんです。さっきも言いましたけど、アレクさんがマルコ・ファスを倒したときに、僕は本当に勇気をもらったんです。そのときにもらった勇気の恩返しをしたい。その気持ちに尽きますよ。

-改めてアレク戦への意気込みを

間下 純粋な実力面では、アレクさんの方が上だと思います。ただSSPWのお客さんは僕の下積み時代をずっと見てくれた方も多いんで支持率は僕が勝ってると思います。「間下、よくここまで頑張ったなあ」って思いで応援してくれてるファンの方の気持ちは裏切れないんで、死ぬ気で勝ちにいきます。僕はチャンピオンとして、佐山先生がリングに帰られたときに「間下、よく頑張ったな。よく持ちこたえてくれたな」って言っていただけるような試合をしていかないといけないんです。僕はタイガーマスクになれなかった人間です。ただ、マスクを被ってないだけで僕も“虎”なんだってことをリングで証明します。3月21日は是非後楽園ホールにお越しください!