辰吉寿以輝、初タイトルマッチへ 父丈一郎が心境「長かったな。10年やで。始まりよ、始まり」

辰吉丈一郎は練習に備えてシューズを履く(撮影・益田一弘)

ボクシング東洋太平洋スーパーバンタム級7位辰吉寿以輝(28=大阪帝拳)が、初のタイトルマッチを迎える。12日に東京・後楽園ホールで、サウスポーの同級王者中嶋一輝(31=大橋)に挑戦する。プロ10年目で初めてのチャンスをつかんだ息子に対して、“浪速のジョー”こと元世界王者の父丈一郎(54)は何を思うのか。今も変わらない「辰吉節」の心境を聞いた。【取材・構成=益田一弘】

 

辰吉は、日本ボクシング界初の親子世界王者を目指して歩み続ける。アマチュア経験なしのたたき上げで、2015年4月のプロデビューから10年目。「浪速のジョー」父丈一郎は、リングサイドで試合を観戦予定だ。

丈一郎 長かったな。10年やで。コロナ禍も大きかった。ただとってないから。ベルトを持ってないんやから。始まりよ、始まり。

辰吉は、幼少期から父の後ろをついてジムに出入りしていた。手ほどきはしたが、丈一郎がボクシングを教えることはなかった。今も指導はしていない。同じ大阪帝拳ジムだが、2人の練習時間は異なっている。

丈一郎 あきらめずにやってきたと人はいう。でも練習するのは普通のこと。腹減ったら、飯食うのをあきらめるんかって。やめられんもの、あるやん。したいことをすればいい

後楽園ホールは、丈一郎が90年9月、プロ4戦目で岡部繁を4回KOして日本タイトルを手にした会場だ。辰吉は、父の早期戴冠を「生意気」と評し、「倒して勝ちます」と宣言する。

丈一郎 どの選手も願わくばKOを狙っている。口では判定でいいです、勝てたからいいです、というけど。そこの美学にたどりつけない人間は上にいけない。家庭を裕福にしたい、お金持ちになりたい、有名人になりたい、いろんな人がおるやん。おれにしたら、その時点でサヨナラや。絶対にとれん。何のためにやるの、チャンピオンやろ。そこにいくまでには試合で勝つこと、全身全霊をかけることができる人間が天下をとると思う。

辰吉は父譲りの連打が得意な攻撃型ボクサー。戦績は16勝(10KO)1分けと無敗レコードを継続中だ。

丈一郎 (特長として)連打がどうとか、ハンドスピードがどうとか、人はいうけど。そこ(近距離)にいくまでの戦略がある。プレッシャーをかけないといけない。こればっかりはやってみなわからん。

辰吉の試合は、いつも母るみさん、妻優さんら辰吉一家で観戦してきた。この大一番に、父はどんな結果を望むのか。その質問に対して、顔をしかめた。

丈一郎 そういうの聞くのがうっとおしい。わかりきったこと聞くから。臆測で書けや、好きなように。

丈一郎は、息子のKO勝ちを期待している。

◆辰吉丈一郎(たつよし・じょういちろう)1970年(昭45)5月15日、岡山県倉敷市生まれ。4戦目で日本バンタム級王者、8戦目で当時日本選手最速の世界王座獲得。引退危機を乗り越えるも、薬師寺との世紀の王座統一戦で判定負け。スーパーバンタム級に上げるも連敗で迎えた97年11月、バンタム級に戻してのシリモンコン戦で劇的勝利。2度の世界王座返り咲きを果たした。2度防衛後、ウィラポンに敗れて陥落。1度は引退表明も撤回し、タイで2戦。戦績は20勝(14KO)7敗1分け。家族は妻るみさん、長男寿希也さん、次男寿以輝。

◆辰吉寿以輝(たつよし・じゅいき)1996年(平8)8月3日、大阪・守口市生まれ。幼少期から父丈一郎の手ほどきを受ける。14年11月にC級ライセンスを取得して、15年4月に2回KO勝ちでプロデビュー。戦績は16勝(10KO)1分け。家族は優夫人、長女の莉羽(りう)ちゃん、長男の秀弦(しゅうげん)くん。168センチの右ボクサーファイター。

※丈一郎の言葉をあますところなく伝えるフルサイズの原稿は、会員サービス「日刊スポーツ・プレミアム」内で連載中の「辰吉寿以輝の現在地」に掲載しています。