あの日のイジメがなかったら、お台場を飛び出していなかったかもしれない。
現役フジテレビ社員のウザ強ヨシヤ(28=Fight Club428)が、4日のRIZIN男祭り(東京ドーム)に出場する。相手は、元K-1王者の朝久泰央(27=朝久道場)。無謀、絶望…。聞こえてくる雑音はあまた。RIZINへの出場は日大時代の17、18年の2度のみ。21年12月12日のRISEの秀樹戦を最後に、リングに上がっていない。「世間も相手もなめていると思うんですよ。『無理だ』『公開処刑』『イジメだ』とか…。関係ないです。ウザいくらいのストーリー見せますよ」。
今大会には、フジへ無断で対戦カード発表会見に出席。同局からは就業規則違反などという理由で、出場を許可されていなかったが「クビになっても出る」と強行突破で、この日を迎えた。
ここまでして、何故そこまでして、リングに立つのか-。格闘技の原点は、多感な学生時代。人生初のイジメが待っていた。当時の彼女を巡り、因縁をつけられた。「学校行くと、校門でそいつの仲間が待ち伏せしていて。何とか回避して教室に行っても、仲間が待っているんですよ。呼び出しとかも日常。50人くらいに追いかけられたこともありましたね。学校に行くのが怖かった。当時の自分はガタイもないし、タッパもなかった。相手からしたら、見た目弱そうな自分を脅したら、彼女と別れると思ったんでしょうね」。感じたこわさ。同時に感じたことのないモノを知った。
たぎる血。湧いてくる音が聞こえた。「負けたくなかったんですよね。シンプルです。強くなればいい。そしたらなめられないと思って。格闘技を始めようと思いました」。それまで、むしろ格闘技を避けてきた。親が年末の格闘技の試合をテレビで流す度にチャンネルを変えるほど。「何で殴り合わないといけないって思っていましたよ。痛そう。かわいそう。血が出てるって」。ただ、それは違った。拳を交わすと、恐怖を上回る快楽を感じた。「ウザ強ヨシヤ」が、産声を上げた。
人生は何が起こるか分からない。イジメのリーダーは、今や現役のプロスポーツ選手。イジメを受けていた張本人は、現役フジテレビ社員。「やり返したい、なんて思いは全くないです。格闘技を始めた当初は、よこしまな気持ちも少しはあったかもしれませんけど、結局仕返しもしていませんし」と笑う。「まだ彼には追いついたとも思っていないですし。ここで勝って、その先も勝たないと胸を張れないし、肩を並べられないので」。
憎しみの感情はとうの昔に消えた。今は感謝の気持ちが強い。「彼がいなかったら、格闘技を始めていないワケで。ありがとうです。ウザ強ヨシヤを誕生させてくれてって」。もう、いじめられっ子じゃない。当時のいじめっ子たちに、そんな姿を見せたい思いもある。「世の中にはそういうことで苦しんでいる人たちが多くいる。本当に偉そうに言えたものじゃないですし、自分はたまたまですけど、格闘技がきっかけで、こういう風に変われた」。だからフジテレビからの戒告処分もいとわず、リングに立つ決意を固めた。もうウザ弱ヨシヤじゃない-。ウザ強ヨシヤが、祭りの主役をかっさらう。