【川島郭志】井上尚弥は想定外のダウンも冷静さ失わず 一級品の左ジャブ軸にカルデナス圧倒

6回、カルデナス(左)に右フックを決める井上(撮影・菅敏)

<プロボクシング:4団体統一スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇4日(日本時間5日)◇米ラスベガス◇T-モバイルアリーナ

4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(32=大橋)が聖地ラスベガスで世界戦11連続KO勝利を挙げ、77年ぶりに世界新記録を更新した。

WBA世界同級1位ラモン・カルデナス(29=米国)の挑戦を受け、8回TKO勝ち。4本のベルトの防衛(WBAスーパー4度目、WBC5度目、IBF4度目、、WBO5度目)に成功。「褐色の爆撃機」と呼ばれた元世界ヘビー級王者ジョー・ルイス(米国)が1948年6月にマークした世界戦通算KO記録(22KO)を抜き、約77年ぶりに世界新記録を樹立した。自身のプロデビュー30連勝という区切り勝利でもあった。

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カルデナスはテクニックがあり、井上でも簡単には勝てないだろうと思っていた。パンチのパワーと切れも想像以上だった。両ガードを高くあげて、王者の左ジャブの打ち終わりを狙う作戦で、よく研究もしていた。7回からは半身のL字ガードに変えて一発を狙った。それでも牙城を崩すことができない。それが井上の強さを象徴していた。

井上は2回に左フックを浴びて想定外のダウンを喫したが、3回以降はストレートのような強い左ジャブを軸に、見事に攻撃を組み立て直して、テクニックを駆使して対抗するカルデナスを圧倒した。定評のある一級品の左ジャブが際立った一戦で、基本の大切さをあらためて感じた。

世界戦でダウンから巻き返すのは容易ではない。ふつうの選手はダメージを引きずってペースを乱すが、井上は冷静さを失わずに相手との距離を読んで反撃に転じた。メンタルの強さも際立っていた。最後は予告通りに中盤に倒して「楽しかった」と振り返る。スーパーチャンピオンだと思う。

今後の対戦相手からも徹底研究されることは間違いない。12月には1階級上のWBA世界フェザー級王者ニック・ボール(英国)への挑戦も計画されていると聞く。相手は小型タイソンのような無敗のパワーファイターだが、井上の質の高いボクシングは別格。間違いなく勝つと思う。(元WBC世界スーパーフライ級王者)

井上尚弥まさかのダウンも8回TKO勝利 11連続KOで世界新 聖地ラスベガスで30連勝/詳細