<天心新聞・番外編>
無敗の格闘家でボクシングWBC世界バンタム級1位の那須川天心(27=帝拳)が8月23、24日の両日、千葉・松戸中央公園で「天心祭」を開催する。世間的にも有名な存在感ある現役ボクサーとはいえ、地元にまったく新しい祭りを提供する異例のイベント。数千万円にのぼる運営資金はすべて自費だという。なぜ今、お祭りなのか? 自ら編集長を務める「天心新聞」番外編として日刊スポーツで思いを明かした。【取材・構成=藤中栄二、首藤正徳】
◇ ◇ ◇
7月15日に突然、「天心祭」開催が発表された。那須川のSNSなどで、開催PR画像がアップされ「ずっとやりたかった事です」などと思いをつづった。過去に地元の「松戸まつり」で屋台を出店してきたが、今年は自らが「祭」を企画&開催する運びとなった。
那須川 昨年からやりたいと言っていて。今年、ちゃんとやろうと。正式に決まったのは6月頭ぐらい。お祭りに来る人ってワクワクしている人しかいないと思うし、そういう波長をみんなに持ってもらいたい。祭りには負の空間やオーラがまったくない。フェスとかは盛り上がりはするけど一体にはならない感覚があって。祭りの方がみんな一緒に囲んで(盆踊りを)踊るし、1つになるのが大事だと思うので。
「天心祭」は集う人々が「同じ目線」「対等」に楽しむスタンスが柱にある。
那須川 発表のSNSで書いたけど、人間に上も下もないと思う。1回振り出しに戻るじゃないけど、やっぱ「上も下もない、みんな人間だよ」がテーマ。来てほしいとか絶対に来てという気持ちもない。軽い感じで、気が向いたら…みたいな。僕は試合も「応援してください」というのはなくて。応援してくれるなら最大限やるし応えるという対等スタンスなんで。今はSNS時代で、それを中心に生きている人が多いけど、人間とのコミュニケーションや体を動かすことが大事。盆踊りも歩くことも運動じゃないですか。運動って「運」を「動」かすこと。動かないと運はつかめないよねって。そういう気持ちを感じてもらいたい。
企画、運営と那須川主導で進んでいる「ゼロ」から始めるイベントとなる。一体、開催資金はどこから捻出されるのか。
那須川 すべて自腹ですね。マイナスは覚悟してる。多分、数千万とか。金額は言えないけど数千万円も後半ぐらいはかかるかな…。入場料は一切、取らない。屋台も適切な値段。本当にみんなに喜んでもらいたいだけなので。でも、これは無駄なマイナスじゃない。毎年続けて、後世に残る祭りにしたい。お金は正直、人よりは持っているし。それを別に自分だけで使うのは好きじゃない。みんなに応援してもらって戦って稼いだお金。応援してもらっている人に還元じゃないけど、使いたい。それは常に思っていることだし、格闘技を通じて人として社会に貢献したい。自分が良くしてもらっている分、返したい。そのために地元を盛りあげたいと思う。
松戸市の協力をはじめ、自らが交流ある有名人にもゲスト登場のオファーを出している。2日間とも最後は2時間ほどの盆踊りが計画される。「ホスト役」那須川は何をやるのか
那須川 僕はフル回転ですよ。ちゃんとやらないと意味ない。普通に屋台も立つし、ステージもやって、ボディーガード、セキュリティーから全部やりますよ。有名人だから日陰にいるとかではない。今回のゲストの方々も直で声をかけて。事務所を通してでなくトップダウンが1番早い。それはマネジャーや周りに迷惑をかけているなと思うし、本当に感謝している。
渋谷区恵比寿や中野区で開催された盆踊り大会にも自ら足を運び「天心祭」開催のヒントにしている。
那須川 敵を知ることが1番大事なので(笑い)。まったく知らないよりは見に行く方がいい。ライバル心あるぞと思いながら盆踊りも参加しました。先日、お祭りで小学6年の女子に「ずっと推しです」と言われて。最初は僕をテレビで見てずっと追っていて後で格闘家と知ったみたいで。「楽しそう」「幸せそう」に見えたと。そういう姿って同調するじゃないですか。格闘家としてではなく、人として応援されるのは、めちゃめちゃうれしい。
第1回イベントの実施前から「天心祭」の毎年開催を目標に掲げている。
那須川 認知してもらうためにも、ちゃんとした1回目にしたい。今後、僕の思いに共感してくれるスポンサーが名乗り出てくれたら、さらに良いものができるかもしれない。僕は「関係ないっしょ、気持ちっしょ」と言うじゃないですか。お金じゃないんですよ。天心祭こそ気持ちでやってる。この気持ちが他の人に伝わったら大きくなっていくと思う。関係ないっしょ、気持ちっしょの祭り。それが天心祭です。
◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日、千葉・松戸市生まれ。5歳で空手を始め、小学5年でキックボクシングに転向。15歳でプロデビュー。プロ6戦目で史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得。18年、初代RISE世界フェザー級王者に。22年、K-1の元3階級制覇王者・武尊を判定で撃破。23年4月に6回判定勝ちでボクシングデビュー。24年10月にWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座獲得。今年6月の世界前哨戦をクリアし、11月は世界挑戦が見込まれる。身長165センチの左ボクサーファイター。